屋根の遮熱塗料の効果について徹底解説!効果なしって本当?

クーラーが欠かせない季節となる夏場、少しでも室温を下げる方法が知りたいと思う人もいるでしょう。
その解決策のひとつとして、屋根に遮熱塗料を取り入れる方法が挙げられます。

しかし遮熱塗料を使ったところで、実際の生活には効果がほとんどないという見解もあります。
このような意見も踏まえて、遮熱塗料の具体的な効果を解説しましょう。

屋根の遮熱塗料とは

屋根の遮熱塗料とは、屋根が受ける太陽光を遮る塗料のことです。
遮熱塗料には、太陽光(近赤外線)を反射させる効果があります。
屋根が太陽光を吸収するのを遮ることで、結果的に熱が室内にこもるのを防ぎます。

また遮熱塗料は、ヒートアイランド現象を防ぎやすくする点でも注目されています。
ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が郊外と比べて高くなる現象です。
建物が集中する都市部で、多くの建物が太陽光を吸収し熱が発生することで起こります。
遮熱塗料は太陽光を反射することで熱の発生を防ぐため、建物による熱の放射もある程度抑えられます。

遮熱塗料の一番の目的は、室温の上昇を抑えて快適な暮らしを得やすくすることです。
一方で太陽光を建物に吸収させない効果は、その地域に住む人々の暮らしにも間接的に役立っているといえます。

屋根の遮熱塗料の効果

太陽光を反射してくれる働きのある遮熱塗料は、日々の生活においても良い影響を与えます。
ここでは、主に遮熱塗料にはどのような効果を期待できるか紹介しましょう。
夏場の生活に悩まされている人は、特に参考にしてください。

室内温度の上昇を抑える

遮熱塗料の効果は、室内温度の上昇を抑えられることです。
製品や間取りによって効果は変わりますが、具体的には屋根材の表面温度が15〜20℃程度下がるといわれています。
室温で表すと、およそ1〜3℃程度下がるとのことです。

また遮熱塗料は耐用年数が比較的長く、メンテナンスする機会を減らせるといったメリットもあります。
一般的な塗料の寿命は10年に満たないケースも多いものの、遮熱塗料の場合は10〜20年持つと考えられています。
つまり室内温度の上昇を抑える効果も、持続しやすい点が特徴です。

夏場は、家の中にいても熱中症や脱水症状が起こる場合もあります。
室温を1〜3℃下げるだけでも、これらの健康被害のリスクはある程度抑えられます。

電気代を節約できる

室内温度の上昇を抑える効果は、当然ながら日々の電気代の節約につながります。
仮に室内温度が1〜3℃減少すれば、その変化に応じてエアコンの温度も調整可能です。
夏場は完全に電源をオフにするのは難しいものの、長い目で見れば光熱費の出費をしっかりと抑えられます。

一般的に夏場の冷房代は、基本料金を除くと室温が1℃下がるごとに10%程度削減できると考えられています。
製品によっては、年間の電気代が3万円程度抑えられたものもあります。

また上述のとおり、遮熱塗料は耐用年数が他の種類と比べて長いのが強みです。
したがって一度塗装すれば、10〜20年間のスパンで電気代の節約を実現できます。
日々の光熱費に悩まされている人は、遮熱塗料の使用も検討してみるとよいでしょう。

屋根の遮熱塗料が「効果なし」と言われる理由

室内温度の調整や電気代の節約と、屋根の遮熱塗料にはさまざまなメリットがあります。
しかし「効果なし」と評価する人もゼロではありません。
ここでは、遮熱塗料の効果を実感できない人がいる理由について詳しく紹介します。

あくまでも遮熱で「断熱」ではない

遮熱塗料の効果を実感しにくい理由は、断熱効果がないためです。遮熱と断熱は混同されやすいですが、双方の意味は異なります。

遮熱とは、建物の外部から室内に熱が侵入するのを防ぐ効果のことです。
一方で断熱は、熱を伝わりにくくする効果を指します。
夏場は外部の熱の影響を受けにくくし、冬場は室内の暖かさが外へ逃げてしまわないようにします。

要するに断熱対策もしておかないと、エアコンで下げた室温が外に逃げやすくなるので効果を維持できません。
室外からの熱を防ぐ遮熱塗料のみならず、室温を外に逃さない断熱材も併用することで、より効果を実感できるようになります。

塗料の素材やメーカーによって性能に差が出る

遮熱塗料も、素材やメーカーによって性能に差が出ます。
高い効果を発揮させるには、これらの要素もしっかりと見直すことが大切です。

一般的に遮熱塗料の素材は、以下の5種類があります。

素材 耐用年数(目安)
アクリル 6年
ウレタン 8〜10年
シリコン 10〜15年
フッ素系 15〜20年
無機系 20〜25年

効果をより長く持続させるためには、フッ素系や無機系を選んだほうが賢明です。
アクリルと無機系では、耐用年数が20年以上も異なるので注意して選んでください。

また同じ素材を使っていても、メーカーによって性能が変わります。
メーカーごとの特徴も事前に調べておくとよいでしょう。

塗料の色によって効果に差が出る

遮熱塗料の効果が得られにくい理由として、黒色の種類を採用しているケースも考えられます。
一般的に色が濃くなると、日射反射率は低くなります。白色の日射反射率は90%を超えるのに対し、
黒色は30%程度しかありません。

つまり色がどんどん濃くなると、建物は熱を吸収しやすくなります。
皆さんも夏場に黒色のTシャツを着ているとき、白色よりのものよりも暑いと感じることはないでしょうか。
これと同様の原理が、建物にも働いています。遮熱塗料の効果をより高くしたいのであれば、できる限り白色に近い種類を選ぶとよいでしょう。

建物の状態によって効果に差が出る

建物の特徴や状態によっても、遮熱塗料の効果には差が生じます。
特に重視されるポイントは以下のとおりです。

  • 立地環境
  • 断熱材の使用の有無
  • 屋根材の種類
  • 吹き抜けがあるか否か

まず効果を感じにくい原因のひとつとして、立地環境が挙げられます。
遮熱塗料の効果は、太陽光の侵入を防ぐことです。
要するに日当たりの悪い場所に建物がある場合は、遮熱塗料を取り入れてもそこまで効果はありません。

また遮熱塗料だけでは、必ずしも室温を下げられるとは限りません。
先ほども説明したように、室温の調整には断熱材の有無も関わってくるためです。
他にも、遮熱塗料は屋根材の種類や吹き抜けの有無も影響しています(効果が出やすい建物の特徴については後述)。

このように遮熱塗料の効果が出なくとも、必ずしも製品そのものが悪いとは限りません。
建物の状態との関係性も理解した上で、遮熱塗料を取り入れるか否かを決めてください。

家のどこに塗るかで効果に差が出る

遮熱塗料は、家のどこに塗るかでも効果に差が出ます。
前提として押さえてほしいのが、遮熱塗料の役割は「太陽光を反射させ、熱吸収を防ぐ」ことです。

要するに大きな効果を得るには、太陽光が当たりやすい場所に塗る必要があります。
このような特徴を考慮すると、特に効果的といえる場所は屋根です。

さらに夏場は冬場と比べて、日射角度が大きくなります。
そのため屋根に遮熱塗料を取り入れたほうが、熱の侵入を防ぐ上では効率的です。

外壁の場合は、方角や他の建物の影響で日射が当たる場所とそうでない場所が大きく異なります。
西日がよく当たる場所に塗れば、効果も発揮されやすくなるでしょう。

職人によって塗りムラが発生する

遮熱塗料の効果は、職人の力量によっても影響されます。
遮熱塗料は技術力を必要とし、スキルが低ければ塗り方にムラが生まれます。
ムラが多ければ、当然ながら室温を下げる効果もあまり期待できません。

同じ塗装作業を提供している事業者でも、人によってスキルの高低は異なります。
事業者のことをよく調べ、複数の候補を挙げた上で選ぶとよいでしょう。

屋根の遮熱塗料の効果が出やすい建物

屋根の遮熱塗料は、建物の状況によって効果の出やすさが異なります。
自身の住居の特徴と照らし合わせた上で、遮熱塗料を採用するか決めるとよいでしょう。
ここでは、一般的に効果が出やすいとされる建物を紹介します。

スレート瓦屋根の建物

遮熱塗料の効果が出やすいとされるのは、スレート瓦屋根の建物です。
スレート瓦は比較的素材が薄く、屋根裏に熱が通りやすい種類とされています。
また下地との間に隙間も生まれにくく、熱がこもりやすくなる素材です。
この特徴から、スレート瓦屋根の建物は室温が上昇しやすいと考えられています。

熱の侵入を防ぐには、遮熱塗料を使用して対処するのが合理的です。
一方でスレート瓦は、他の屋根材よりも耐久性が低いといった特徴もあります。
遮熱塗料は耐用年数が長いものの、スレート瓦の影響でメンテナンスが多くなる可能性もあるので注意しましょう。

金属屋根の建物

金属は、熱を通しやすい性質を持っています。
また金属屋根はスレート瓦と同じく、比較的薄く作られる素材です。
したがってスレート瓦と同様に、屋根裏に熱がこもりやすくなるデメリットがあります。
このようなデメリットを克服するには、遮熱塗料の使用が有効です。

金属屋根の場合、スレート瓦と比べると耐久性に長けています。
気候や自然災害による影響をそこまで受けにくいので、遮熱塗料の耐用年数の長さも生かせます。
もしトタンやガルバリウム鋼板を採用している建物に住んでいるのであれば、遮熱塗料を使用するのをおすすめします。

吹き抜けがある建物

吹き抜け天井がある建物も、遮熱塗料が推奨されるケースのひとつです。
吹き抜け天井は室内に開放感が生まれる一方で、室温が高くなる傾向にあります。
その理由は太陽光により生じた屋根の熱が、ダイレクトに室内にも伝わるためです。

加えて吹き抜けを設けると、建物の容積率が高まります。
この特徴により、エアコンが効きにくくなるのも室温が上がる理由のひとつです。

吹き抜け天井付きの建物において、室温の上昇を抑えるには屋根からの熱の侵入を防ぐのが効果的です。
開放感のある家に住みたいものの、室温もしっかりと調整したい場合は遮熱塗料の使用を検討してみてください。

2階以上の建物

2階以上の建物に住んでいる人も、遮熱塗料の採用をおすすめします。
階数の多い建物は、性質上高さが生まれます。
すると屋根を遮るものがなくなり、太陽の光を浴びやすくなります。

特に2階や3階で過ごしていると、夏場は熱気で過ごしにくく感じるでしょう。
1階部分で商売をしている場合など、2階部分にリビングを設けるケースも少なくありません。
熱中症の危険性を考慮すると、過度に熱気がこもる環境を放置することは極めて危険です。

高い建物ほど、日射が外壁にも当たりやすくなります。
そのため屋根のみならず、外壁にも遮熱塗料を使用したほうが賢明です。

屋根の遮熱塗料の効果を高めるポイント

屋根の遮熱塗料の効果を高めるには、工事を依頼する前に押さえてほしいポイントがあります。
その上で対策を考えるだけでも、暮らしやすい環境を手に入れやすくなります。
ここでは、特に重要なポイントを2点紹介しましょう。

工事は実績のある業者に依頼する

まず意識してほしいポイントは、実績のある業者に工事を依頼することです。
前述のとおり、遮熱塗料は施工者の腕によって効果が大きく異なります。
スキルのない人に頼んでも、塗り方にムラが出て思った以上の効果が出ない場合もあります。

そこで業者を選ぶ際には、施工会社のホームページを参考に実績を調べてみましょう。
遮熱塗料に関する実績が多く取り上げられている会社であれば、候補に入れるといった方法を採るのをおすすめします。

加えて、業者選びには客観的な評価を参考にしたほうが得策です。
施工会社のホームページのみならず、口コミやSNSなど幅広く情報を探してみましょう。
候補を複数選び、相見積もりを取るなど慎重に調べることが大切です。

遮熱シートも検討する

さまざまな工夫を凝らしても、遮熱塗料の効果には限界があります。
そこでより高い効果を得たいときは、遮熱シートの使用をおすすめします。

遮熱シートのメリットは、遮熱塗料よりもそもそもの日射反射率が高くなりやすい点です。
一般的に遮熱塗料は、しっかりと塗っても反射率が60〜80%程度とされています。
しかし遮熱シートであれば、95%以上の数値を誇る製品もあります。

また遮熱シートは被せておくだけであるため、遮熱塗料のようにムラが生まれません。
屋根に被せれば、雨漏り対策に繋がる点もメリットのひとつです。

一方で遮熱シートの寿命は10年と遮熱塗料よりも短く、取り替える際には貼り直しが必要になるデメリットもあります。
メリットとデメリットを比較しつつ、取り入れるか否かを決めましょう。

まとめ

この記事では、遮熱塗料の特徴と建物に与える影響について紹介しました。
遮熱塗料は、太陽光による熱の侵入を防ぐ上で役立つ塗料です。
しかし実際に使用していると、効果を実感しにくいと感じる人もいます。

そこで遮熱塗料を取り入れる際には、施工業者や建物の環境をよく調べることが大切です。
場合によっては、遮熱シートを利用したほうが効果を実感できるケースもあります。
どの方法もメリットとデメリットがあるので、これらを調べた上で判断してください。