外壁塗装にはどういった種類の塗料がある?種類やメリット・デメリットを解説

「外壁塗装を検討しているけれど、どの塗料を選べば良いか分からない」という方は
多いのではないでしょうか。

この記事では、外壁塗装に使用する塗料の種類について詳しく解説します。
「なるべく費用を抑えたい」「長持ちする塗料にしたい」など、
さまざまなニーズに応えるヒントを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜさまざまな種類の塗料があるのか

アクリルやシリコン、フッ素塗料など、外壁の塗料にさまざまな種類が存在する理由は、
消費者一人ひとりのニーズに柔軟に対応するためです。

住宅ひとつを取っても、立地や間取り、デザイン、予算などは異なり、住居者のこだわりがそれぞれ詰まっています。
外壁の塗料においても、「耐久性を重視したい」「費用は抑えたい」など、一人ひとり重視する要素は異なるでしょう。

それぞれのニーズに合わせて価格帯や耐久性、機能面などが異なる多くの塗料が開発されることで日々種類が増え、
塗料も進化しています。

塗料を適切な指標で比較検討しよう

外壁に用いられる塗料にはすべて防水性がありますが、耐久性をさらに高めるため、
透湿性や防カビ性など、異なるその他の特性も備わっています。

ここでは、塗料を選ぶ際の基準・目安にもなる特性を9つ解説します。

透湿性

透湿性は、壁の内部などに溜まりやすい湿気を逃す性質のことです。
液体(雨水)と気体(湿気)の分子の大きさによる違いを利用することで、
分子の大きな雨水の侵入は許さずに、分子の小さい湿気のみを透過します。

透湿性の高い塗料を選ぶことで、塗膜の剥がれや膨れが生じにくくなることが特徴のひとつです。
特にモルタル外壁や直貼りサイディング外壁などには、透湿性塗料の使用が推奨されています。

防カビ・防藻性

防カビ・防藻性は、カビや藻、コケなどの発生を防ぐ性質のことです。

カビや藻、コケの発生は外壁の美観を損ねるだけでなく、
雨水や湿気が外壁に溜まりやすくなることで外壁の劣化を進めてしまう可能性もあるため、
できる限り避けたい劣化症状のひとつです。
防カビ・防藻性がある塗料は、薬剤や高圧洗浄などを用いてすでにあるカビなどは取り除き、
キレイな状態の外壁に塗布することで、効果を発揮します。

防錆性

防錆性は、文字通りサビを防ぐ性質のことです。
サビは、金属に雨水などが付着し酸素と結びつくことで発生します。
そのままにしておくと金属部分の劣化が進むだけでなく、サビの範囲が広がる可能性もあり、
外壁全体の強度にも影響を与えかねません。

住宅内部を守るため、常に雨風にさらされている外壁の金属部分が腐食しないよう防錆性がある塗料を塗布することで、
表面を保護します。

遮熱性

遮熱性は、近赤外線を反射する性質のことです。
外壁に遮熱性のある塗料を塗布することで近赤外線を反射し、室内温度の上昇を抑えます。
夏場の暑さ対策として用いられることが多く、室内温度の上昇を抑えることで省エネや電気代の節約なども期待できるでしょう。

地域によって差はあるものの、近年、日本の平均気温は徐々に上がっており、
外壁の塗装は、長い時間高温があたることで塗料の分子破壊・分解物の生成が進み劣化することもあります。
遮熱性塗料は室内温度の上昇を抑制する以外に、熱による塗装の劣化も抑えられます。

断熱性

断熱性は、熱伝導を抑える性質のことです。
室内外の熱・冷気の移動をゆるやかにすることで、夏場は室内の温度上昇を抑制する一方、冬場は室内の温度を温かく保ちます。
前述の遮熱性が、暑さ対策に効果を発揮するのに対して、
断熱性は暑さだけでなく寒さ対策にも効果を発揮する(保温効果がある)点が違いです。
遮熱性と断熱性は効果などの違いから耐用年数や費用にも差があり、断熱性を備えた塗料のほうが費用が高い傾向にあります。

耐候性

耐候性は、劣化原因となる雨や風、太陽光などにさらされる屋外の環境下で耐えうる性質のことです。
外壁の劣化には、色褪せやひび割れ、チョーキング(外壁を手で触ったときに白い粉が付着する)などが挙げられますが、
耐候性の高い塗料を用いることで、色褪せやチョーキングといった劣化のスピードを遅らせることができ、
外壁の美観を長く保てます。
建築用の塗料においては「耐候性=塗料の耐久性の指標」として、塗料選びの重要な要素のひとつとされています。

低汚染性

低汚染性は、汚れが付きにくい性質のことです。
特殊なコーティング技術によって、塗膜の密度を高めることで汚れが付着しにくくなっています。
密度の高い塗膜によって汚れが浮きやすくなり、付着しやすい排気ガスの汚れやホコリなども雨が降ることで容易に流れやすく、
外壁の美観を長く保てることが特徴です。
低汚染性の塗料を用いることで塗膜の劣化を防ぎ、外壁だけでなく建物の寿命を延ばすことにもつながるでしょう。

耐火性

耐火性は、火災時などに火から建物を守る性質のことです。
塗料が火に対してどれだけ耐えられるかを示すもので、耐火性が高い塗料であるほど、
火災時の火の燃え広がりを遅らせ、火の拡散(延焼)を防げます。

戸建て住宅に使用されることはあまり多くなく、主に工場や倉庫、高層ビルや病院といった大型物件など、
火災のリスクを最小限に抑え、より安全性を確保する必要のある建物に採用されています。

伸縮性

伸縮性は、外壁のひび割れ(膨張や収縮)などに対応できる性質のことで、弾性とも呼ばれます。
地震や台風などの自然災害によって外壁の下地にひび割れが生じた場合でも、
伸縮性が高い塗料を用いることで塗膜へのひび割れの広がりを抑え、水の侵入を防ぎます。
伸縮性が高い塗料は、建物の安全性を高めるだけでなく、美観を長く保つことにもつながるでしょう。
ひび割れが起こりやすいモルタル外壁やALCパネルなどには、伸縮性が高い塗料の使用が推奨されています。

外壁塗装の種類はどの塗料を使用するかで決まる

外壁の塗料にはさまざまな種類がありますが、
どの塗料を選んでも塗装工事のおおまかな流れ(足場の設置や養生、洗浄、塗装など)はほとんど同じです。

そのため、外壁塗装の種類は使用する塗料によって決まり、塗料によってメンテナンスの頻度や費用などが異なります。

ここでは代表的な塗料10種類について、それぞれの耐用年数・費用(㎡単価相場)を見てみましょう。

種類 耐用年数 費用(㎡単価相場)
アクリル塗料 3~7年 1,000~1,500円
ピュアアクリル塗料 15~20年 3,500~5,000円
ウレタン塗料 7~10年 1,500~2,500円
シリコン塗料 10~15年 2,000~3,500円
フッ素塗料 12~20年 3,000~5,000円
無機塗料 20~25年 3,500~5,500円
低汚染塗料 15年以上 2,000~3,000円
ラジカル塗料 12~15年 2,300~4,000円
光触媒塗料 15~20年 3,500~5,000円
ナノテクノロジー塗料 10~15年 2,300~4,500円

外壁塗装の塗料をそれぞれ解説

塗料には、一般的な戸建て住宅に採用されるものからビルやマンションなどの
大型物件に採用されるものまでさまざまな種類があります。

ここでは、代表的な10種類を取り上げますので、それぞれの特徴を押さえて自宅にピッタリの塗料を選びましょう。

アクリル塗料

アクリル塗料はアクリル樹脂を主成分とする塗料です。
重ね塗りがしやすいため失敗しにくく、発色が良いことが魅力のひとつです。
耐用年数は短いですが、他の塗料と比較して費用を安く抑えられることもメリットといえるでしょう。

しかし、屋外での耐久性は低いため、外壁塗装に使用されることは多くありません。
「メンテナンスの頻度が高くなってでも費用を安く抑えたい」「発色が良いものを選びたい」
「短いスパンでいろいろなカラーを楽しみたい」場合などに向いています。

ピュアアクリル塗料

ピュアアクリル塗料は、従来のアクリル塗料から添加物や可塑剤などの不純物を
できる限り取り除いたアクリル塗料(純度100%)です。

アクリル塗料のデメリットでもあった紫外線に弱い点を解消し、耐久性と防水性が高まりました。
伸縮性(弾性)にも優れているためひび割れが生じにくく、モルタル外壁などに向いています。
ピュアアクリル塗料の費用は、アクリル塗料よりもおおよそ2倍近く高い傾向にありますが、耐用年数も15年以上と、2倍近く長くなっています。

ウレタン塗料

ウレタン塗料は、ポリウレタン(ウレタン系樹脂)を主成分とする塗料です。
伸縮性や密着性に優れていることが特徴で、塗る場所を選ばず木や金属などさまざまな素材の塗装に使用できます。
また、光沢のある塗膜によって仕上がりにもツヤが生まれます。
費用は比較的安価であるものの、耐久性や耐候性は低く耐用年数はそれほど長くないため、
「費用を抑えたい」「光沢のある塗装を求めている」場合などに向いているでしょう。
近年では、後述するシリコン塗料の台頭によりコストパフォーマンスなどの側面から
外壁塗装に使用されることは少なくなっています。

シリコン塗料

シリコン塗料は、シリコンやアクリル樹脂などを主成分とする塗料です。
防汚性・撥水性に優れており、耐用年数と費用のバランスの良さから、
外壁塗装におけるスタンダードな塗料として長きにわたって使用されています。
日本ペイントやエスケー化研、関西ペイントなど、大手メーカーからさまざまな種類のシリコン塗料が販売されており、
自宅に合った塗料を選択しやすいことが魅力のひとつです。
「数ある種類の中から気に入った塗料を選びたい」「実績のある塗料が良い」場合などに向いています。

フッ素塗料

フッ素塗料は、蛍石を原料とするフッ素樹脂を主成分とした塗料です。
耐候性の高さに優れていることが特徴のひとつで、24時間365日紫外線の影響を受け続ける外壁の劣化スピードを
遅らせられることが耐用年数の長さにもつながっています。
費用は少々値が張りますが、耐用年数が長い分トータルコストを抑えられるといえるでしょう。

戸建て住宅に使用することもありますが、ビルやマンションといった大型の建物や橋など、
メンテナンス頻度を抑えたい建築物に採用されることが多いです。

無機塗料

無機塗料は、炭素を含まない無機物質を主成分とする塗料です。
アクリル塗料やシリコン塗料などのいわゆる有機塗料に含まれる樹脂成分はほとんど含まないため劣化スピードが遅く、
コケやカビ、藻などの発生が抑えられます。
ひび割れしやすいとの難点もありますが、耐用年数が長く、耐火性にも優れているため火災時などは延焼が防げます。

「コケやカビ、藻の発生を抑えたい」「費用が高くてもメンテナンスの頻度を少なくしたい」場合に向いているでしょう。

低汚染塗料

低汚染塗料は、シリコン樹脂を主成分とするものやフッ素樹脂を主成分とするものなど、さまざまなタイプがある塗料です。
特殊なコーティング技術によって汚れが付着しにくいことが特徴で、セルフクリーニング機能が備わっています。
水になじみやすい性質(親水性)に優れており、仮に汚れが付いた場合でも、
雨水が塗膜(外壁と汚れの間)に流れ込むことで汚れを浮かせて落とします。
雨だれによる汚れや、カビや藻の発生が抑えられるため、メンテナンスの手間を省きたい場合におすすめです。

ラジカル塗料

ラジカル塗料は、ラジカル制御型チタン(高耐候酸化チタン)と光安定剤(HALS)などを使用した塗料です。
2010年代に新たに登場した塗料で、ラジカル制御形塗料とも呼ばれます。
「チョーキングが発生しにくい」「低汚染性に優れている」などの特徴を持ちながらも、安価である点が魅力です。

光触媒塗料

光触媒塗料は、酸化チタンを主成分とする塗料です。
太陽光の力を活用して自然に外壁の汚れを分解・洗浄するセルフクリーニング機能に優れています。
他にもカビやコケ、藻の発生の抑制、空気洗浄効果が期待できるなどのメリットがありますが、費用が高い、
日当たりが悪い場所ではセルフクリーニングの効果を発揮しにくい点などはデメリットといえるでしょう。
「日当たりの良い住宅に使用する」「美観を長く保ちたい」場合には向いています。

ナノテクノロジー塗料

ナノテクノロジー塗料は、文字通りナノテクノロジーを活用した塗料です。
使用する石油系樹脂の量を最小限に抑えるため、エコロジー塗料(環境に配慮した塗料)とされています。
汚れが付きにくい、色褪せしにくいといった低汚染性や耐候性に優れているほか、他の水性塗料と比較して速乾性が高く、
また刺激臭が少ないため周囲へのにおいによる影響を抑えられる点などが魅力です。
ただし、最先端技術による塗料のため、取り扱っているメーカーは限られています。

まとめ

外壁塗装に使用する塗料には、アクリル塗料やシリコン塗料、無機塗料など、数多くの種類があります。
塗料を選ぶ際は、好みのカラーで選択することもひとつですが、外壁材との相性や塗料そのものが持つ性質(断熱性や低汚染性など)などを考慮することも大切です。
メンテナンスの頻度や費用なども含めてニーズに合った塗料を選択することで、より快適な暮らしに近付けるでしょう。