雨漏りは、快適な暮らしを求める上で避けたい住宅トラブルのひとつです。
雨漏り対策をするには、屋根材だけでなくルーフィングも重要です。
この記事では、ルーフィングの主な役割や重要性について詳しく解説します。
種類別の特徴や価格、選び方のコツもまとめるので施工業者に依頼する際の参考にしてください。
- 目次
- ルーフィング(シート)とは|防水シートとの違いは?
- ルーフィングは屋根の3層構造の中間
- ルーフィングの重要性│雨漏りの原因はルーフィングの劣化かも…
- ルーフィングの主な種類│特徴・耐久性・価格の傾向
- アスファルトルーフィング
- 改質アスファルトルーフィング
- 遮熱ルーフィング
- 高分子系ルーフィング
- 透湿防水ルーフィング
- 不織布ルーフィング
- 粘着式ルーフィング
- ルーフィング選びのチェックポイント
- 性能・性質の違い
- コストパフォーマンス
- 地域の気候との相性
- 屋根材との相性
- ルーフィングを覆う主な屋根材の種類と特徴は?
- まとめ
ルーフィング(シート)とは|防水シートとの違いは?
ルーフィング(シート)とは、屋根工事において「防水紙」の役割を指す物です。
ただし、会社や担当者によっては「ルーフィング=防水紙」ではなく、
「ルーフィング=屋根」と捉えている場合もあり、その定義は人によって曖昧でもあります。
この記事では「ルーフィング=防水紙」と定義して解説しています。
ルーフィングは別名で下葺き材とも呼ばれており、主に雨漏りを防ぐ役割を担います。
また、「防水シート」と呼ばれることもあり機能面の違いはありません。
屋根に取り付ける際には、1枚の大きなシートをただ貼るだけではありません。
幅約1m程のシートを、メーカー規定の縦方向に10cm以上と横方向に20cm以上に重ねて貼ります。
特に雨漏りがしやすい部分には、二重に重ねて貼ることもあります。
ルーフィングは屋根の3層構造の中間
ここで、家屋の屋根構造について紹介します。
一般的に屋根は、外側から順に屋根材・ルーフィング・野地板の3層構造で作られます。
私たちが普段から目にする表層にあるのが「屋根材」ですが、これだけでは完全に防水することができません。
取り付ける際にどうしても隙間が生まれ、簡単に雨水が侵入してしまうからです。
隙間から入ってきた雨水を屋内に入れないためには、
野地板と屋根材の間にルーフィングを取り付けて外に流す必要があります。
裏を返せば、たとえ暴風で屋根材の一部が吹き飛ばされたとしても、ルーフィングに異常がなければ雨漏りを防ぐことは可能です。
また下層の野地板に雨水が侵食すると、建物の腐食を引き起こしてしまいます。
ルーフィングは、建物全体の寿命を高める上でも役に立っています。
ルーフィングの重要性│雨漏りの原因はルーフィングの劣化かも…
もし、屋根材が新しいにも関わらず雨漏りに悩まされているのであれば、ルーフィングの劣化を疑ってみてください。
建物に詳しくない人は、瓦などの屋根材そのものに原因があると認識しがちです。
しかし実際には、ルーフィングに問題があったというケースも多いです。
そのため、屋根の修理をする際は、屋根材だけでなくルーフィングも新しくするようにしましょう。
ルーフィングが劣化する主な原因としては以下が挙げられます。
- 天候や気温によって素材の伸縮が繰り返される
- タッカー(ホチキスの針のようなもの)で留めた部分の穴が広がる
一般的に、ルーフィングの寿命は10〜20年程度とされています。
この年数を基準に考えて、交換するタイミングを自分自身でも把握しておくとよいでしょう。
新築時と修繕時以外はあまり意識しないかもしれませんが、快適な生活に重要な要素であることを忘れないでください。
ルーフィングの主な種類│特徴・耐久性・価格の傾向
ルーフィングには、さまざまな種類があります。
種類ごとに特徴や耐久性、価格の傾向が異なるため慎重に選ばなければなりません。
主な種類を紹介するので、施工してもらう際の参考にしてください。
アスファルトルーフィング
数々の種類の中でも、使われる頻度が比較的高い材料がアスファルトルーフィングです。
複数の紙を重ねた板紙(ボール紙)などにアスファルトを染み込ませることで、高い防水効果を発揮します。
加えて、価格が他の素材と比べると比較的安く設定されているところも使用されやすい理由です。
アスファルトルーフィングは普及率が高く、多くの施工業者に採用されていますので、
どの業者に依頼しても、問題なく施工してもらえるでしょう。
一方で、耐久性が低い点がデメリットです。その理由として、季節による材質の変化が挙げられます。
アスファルトは気温が高いと柔らかくなり、逆に低くなると固まる性質を持ちます。
この変化の繰り返しでヒビが入ってしまい、破れる原因に繋がります。
改質アスファルトルーフィング
改質アスファルトルーフィングは、耐久性の低さを克服するために改良されたアスファルトルーフィングです。
アスファルトにゴムや合成樹脂、プラスチックなどを混ぜた素材が使われています。
気温による材質の変化を抑制でき、寿命も延びるのが特徴です。
加えて元の素材がアスファルトであるため、高い防水効果も期待できます。
防水性に力を入れつつ、ルーフィングの耐久性を高めたい人におすすめな種類です。
改質アスファルトルーフィングのデメリットには、価格の高さが挙げられます。
とはいえ通常のアスファルトと比べると寿命は延びるため、メンテナンス回数が減るでしょう。
そのため、結果的にどちらの方が安くなるかは不明であるため、施工業者のアドバイスを受けましょう。
遮熱ルーフィング
遮熱ルーフィングとは、文字通り建物内の温度の上昇を抑える働きがあります。
太陽からの日差しを反射させる素材が用いられており、輻射熱(ふくしゃねつ)を遮るのが特徴です。
※輻射熱:赤外線より伝わる熱
施行業者によっては、透湿防水効果を兼ね備えた「遮熱型透湿ルーフィング」を採用しているところもあります。
特に2階建ての家に住んでいる場合、直射日光が当たって夏場の2階の気温が著しく上昇しやすくなります。
クーラーの設定温度を下げて対応するのもよいですが、電気代を節約したい人も一定数いるはずです。
遮熱ルーフィングを活用すれば快適な温度を保ちやすくなり、電気代の節約にも繋がります。
ただし、屋根に取り付ける際には専門的な知識や技術が必要です。
業者や職人によっては対応できない可能性もあります。
また、相性の良い屋根材も限られているので、効果を発揮できる条件が厳しい点もデメリットといえます。
高分子系ルーフィング
高分子系ルーフィングとは、アスファルトではなく合成ゴムや塩化ビニールを使って作られたルーフィングのことです。
軽量で伸縮性が高いのが特徴であり、アスファルトルーフィングと比べても耐久性は高くなります。
またアルミ反射層を取り入れることで、遮熱効果が発揮できる製品もあります。
価格も比較的安いため、採用しやすい素材のひとつです。
一方で高分子系ルーフィングのデメリットは、下地の状態によって採用できない場合もあることです。
合成ゴムや塩化ビニールであれば、一般的に平面下地のみ施工できる素材となっています。
加えて、合成ゴムは紫外線に弱い性質もあります。
耐久性の高い素材であるものの、紫外線の影響を受けやすい環境では経年劣化が進みやすくなる点も押さえてください。
透湿防水ルーフィング
透湿防水ルーフィングは、湿気を防ぐのに適したルーフィングです。
通気層を設け、たとえ屋根が濡れていても乾きやすくなる素材となっています。
建物の寿命には、湿気も大きな影響を与えます。
住宅の寿命を考慮して、透湿防水ルーフィングを選ぶのも考え方のひとつです。
透湿防水ルーフィングのメリットとして、耐久性の高さが挙げられます。
初期コストは高いものの、長期間使用できるのでランニングコストは安くなる傾向があります。
ただし施工業者の腕に左右される素材であるため、慎重に業者を選ぶようにしてください。
一方で施工に時間がかかる点が透湿防水ルーフィングのデメリットです。
通気層をつくる難易度が高いことから、工事の際に多くの費用と時間を要します。
不織布ルーフィング
厚紙ではなく、布を使用したものが不織布ルーフィングです。
ルーフィングの中でも高級な素材となっており、紙と比べて破れにくいメリットがあります。
耐久性の高さを重視するのであれば、不織布ルーフィングも選択肢に入れておくとよいでしょう。
他にも、柔軟性に富んでいる点も不織布ルーフィングの特徴のひとつです。
形を柔軟に変えられるため、さまざまな下地に活用できます。
比較的施工しやすい素材であり、施工業者の腕に左右されにくいのもメリットです。
先程も説明したとおり、不織布ルーフィングは紙よりも高価な布を採用しています。
施工してもらうにあたり、コストが高くなりやすい点がデメリットです。
とはいえ耐久性が上がることから、メンテナンスの回数は比較的少なくなります。
粘着式ルーフィング
粘着式ルーフィングとは、粘着シートを使って屋根に貼り付けるタイプのルーフィングです。
基本的にルーフィングはタッカーで留めますが、こちらのタイプは粘着シートで施工するので小さな穴も開きません。
そのため、粘着式ルーフィングは比較的耐久性が高いといった強みを持ちます。
実際にタッカーで穴を開けても雨漏りの心配はないものの、経年劣化によって穴が大きくなる可能性はあります。
穴を開けない粘着式シートであれば、雨漏りを防ぎやすくなる点がメリットです。
しかし粘着式ルーフィングは高価な上に、湿気を逃がす場所も塞いでしまうデメリットがあります。
室内の湿度が高くなりやすいので、このような点も合わせて考慮しなければなりません。
ルーフィング選びのチェックポイント
ルーフィングは、種類によってさまざまなメリットやデメリットがあります。
施工業者に依頼する際には、いくつかのチェックポイントを自分で作っておくと良いです。
ここでは、ルーフィング選びのチェックポイントの具体例を紹介します。
性能・性質の違い
ルーフィングを選ぶ際には、性能や性質の違いに目を向けてください。
ルーフィングの基本的な役割は、雨天時の雨漏りを防ぐことです。
したがって防水性に優れており、かつ簡単に破れないような素材が重視されます。
しかし天井をルーフィングで覆ってしまうと、湿気がこもりやすくなります。
室内の湿度が高くなりすぎないためには、透湿性に優れた素材にも目を向けなければなりません。
防水性・耐久性・透湿性のバランスをしっかりと考慮しましょう。
コストパフォーマンス
ルーフィング選びには、コストパフォーマンスも重要です。
実際に施工してもらうとなると、どうしても初期コストに目が行ってしまうかもしれません。
しかし長期間過ごす上では、ランニングコストにも注目した方が賢明です。
あまりにも安価なルーフィングを選んでしまうと、すぐに破れるなど短期間でメンテナンスが必要になる場合もあります。
高価な素材を使っているものは、基本的に耐久性も高くなるものです。
初期コストとランニングコストのどちらを重視するかを、自分なりに決めておくとよいでしょう。
地域の気候との相性
ルーフィングは、住んでいる地域の気候との相性にも左右されます。
性能の高い素材を活用しても、気候によって効果が最大限に発揮されない場合もあるので注意してください。
積雪量が多い地域であれば、雪解け水の侵入を防ぐ必要があります。
そのためタッカーで穴を開けるよりは、粘着シートで貼り付けるだけの粘着式ルーフィングが望ましいとされています。
周辺に高い建物や木がなく、直射日光の当たりやすい家の場合は遮熱ルーフィングを検討してみてもよいでしょう。
屋根材との相性
ルーフィングを選ぶときは、その上に設置される屋根材との相性も念頭に置かなければなりません。
特に、屋根材よりも寿命が長いものを使用するよう心がけましょう。
ルーフィングが先に破損した場合、屋根材まで取り除かないといけなくなるためです。
加えて、屋根材によって使用できないルーフィングも存在します。
せっかく良い素材を見つけても、自分の家に採用できなかったら別のものを探す必要があります。
ルーフィングを覆う主な屋根材の種類と特徴は?
ルーフィングを覆う屋根材にも、さまざまな種類があります。それぞれの特徴について簡単にまとめましょう。
屋根材の種類 | 特徴 |
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粘土瓦 |
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スレート |
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コンクリート瓦(セメント瓦) |
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ガルバリウム鋼板 |
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トタン |
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銅板 |
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ステンレス板 |
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屋根の機能性や耐久性を高めるには、屋根材の素材にも目を向けることが大切です。
屋根材とルーフィングの性能が揃って、初めて質の高い屋根が完成することを押さえてください。
まとめ
この記事では、ルーフィングの役割や重要性について解説しました。
雨漏りを防ぐには、住居に合ったルーフィングを選ばなければなりません。
防水性や耐久性を中心に、各種類の特徴をしっかりと押さえてください。
加えて、ルーフィングの性能を生かすには屋根材との相性も大切です。
屋根材にもさまざまな種類があるので、何を使うべきかをしっかりと考えましょう。
ルーフィングと屋根材選びに力を入れるだけでも、住居の耐久性、快適性の向上が見込めます。