ルーフィングの耐用年数は屋根の寿命を左右する!種類別の年数は?

屋根の防水紙であるルーフィングは、屋根材とともに家を雨水から守っています。
種類によって耐久性などは異なるため、それぞれの特徴を理解した上で選択することが大切です。

本記事では、ルーフィングの寿命ともいえる耐用年数や特徴について種類ごとにご紹介します。
理解を深めたい方はぜひ最後までお読みください。

ルーフィング(ルーフィングシート)は屋根の下葺きに使う防水紙

ルーフィングとは、瓦やスレートといった屋根材の下に設置する防水紙のことです。
屋根の下葺き(したぶき)に使うことから、下葺き材とも呼ばれます。

屋根材で防ぎ切れなかった雨水が、屋根の下地材に染み込んだり建物の内部に侵入したりすることを防いで、
軒先へ流す役割を担っています。
雨風を直接防ぐ屋根材が一次防水であり、ルーフィングは二次防水であると考えるとわかりやすいでしょう。

企業や担当者によってはルーフィングを「屋根」と捉えるなど、認識が異なるケースもありますが、
本記事では、「ルーフィング=防水紙」とした上で解説します。

 

ルーフィングについて、より詳しく知りたい方は以下の記事も併せてお読みください。
>>ルーフィングの役割や重要性とは?種類別の特徴や価格、選び方も紹介

ルーフィングの主な種類と一般的な耐用年数・寿命

ルーフィングにはいくつか種類があり、それぞれ材質が異なります。
メーカーによって耐用年数などに差はありますが、ここでは一般的なルーフィングを7種類取り上げ、
おおよその耐用年数と特徴を解説します。

アスファルトルーフィング│耐用年数:10~20年

耐用年数は、おおよそ10~20年のアスファルトルーフィング。

基材(原紙)にアスファルトを浸透させて製造したもので、住宅や高層ビルなど、
一般的な建物に広く使われている種類のひとつです。

魅力はなんといっても、アスファルトで舗装された道路と同様に止水性が高いこと。
しかし、アスファルト特有の状態変化(温度によって柔らかくなったり硬くなったりすること)により、
他の材質と比較すると耐用年数が短いとされています。
それゆえ、小まめなメンテナンスが必要であるといえるでしょう。

改質アスファルトルーフィング(ゴムアスルーフィング)│耐用年数:20~30年

耐用年数は、おおよそ20~30年の改質アスファルトルーフィング。

アスファルトの欠点ともいえる材質特有のさまざまな劣化を防ぐため、
合成ゴムや合成樹脂などを混ぜて製造されています。

改良によって得られた耐久性とアスファルトならではの止水性が魅力で、
いわばアスファルトルーフィングの改良版といえるでしょう。
タッカー(ルーフィングを屋根下地に固定するホッチキス状の道具)をした際に開いてしまう小さな穴を埋める力が強いです。

ただし、湿気を溜め込みやすいため凍結してしまう恐れがあるといった弱点があります。

粘着層付きアスファルトルーフィング│耐用年数:30年

耐用年数は、おおよそ30年の粘着層付きアスファルトルーフィング。

名前の通り接地面(片面)に粘着層が付いたアスファルトルーフィングのことで、
メーカーによっては、貼り直しが可能な遅延粘着型の製品もあります。

野地板(下地材)とルーフィングを粘着力によって固定するため、野地板にタッカーや釘による穴が開きません。
防水性と密着性が高く、耐用年数がおおよそ30年と耐久性にも優れていることが強みです。

通常のアスファルトルーフィングと比較すると費用が高い傾向にありますが、
タッカーや釘が使用しづらい特殊な形状の屋根にも対応できる点が大きな特徴といえます。

透湿防水ルーフィング│耐用年数:50年

耐用年数は、おおよそ50年の透湿防水ルーフィング。

ポリエチレン不織布などから製造されており、防水に優れているだけでなく、
通気性があるため湿気を逃しやすいという特徴を持っています。

通常、雨漏りを防げても、湿気がこもることで結露ができ野地板が腐食する可能性が考えられますが、
湿気を効果的に排出できる透湿防水ルーフィングなら、野地板の乾燥状態が保てるため腐朽を抑えられます。

しかし、設置には通気層の工事が必要なため時間を要します。
費用も高い傾向にありますが、耐用年数が長いため、結果的にコストパフォーマンスに優れているとも考えられるでしょう。

遮熱ルーフィング│耐用年数:20~50年

耐用年数は、おおよそ20~50年の遮熱ルーフィング。

表面がアルミのような反射層を持つ素材でできており、透湿性があるだけでなく、遮熱性も兼ね備えています。

太陽からの熱を反射して吸収しないため、室内の温度が上がることを防ぐだけでなく、2~3℃下げる効果があるとされています。
夏場に気温が上がって暑くなり過ぎるエリアにお住まいの方に向いているでしょう。

ただし、通気層を設ける工事が必要なため、施工には手間とコストがかかります。

高分子系ルーフィング│耐用年数:15~20年

耐用年数は、おおよそ15〜20年の高分子系ルーフィング。

合成ゴムや塩化ビニールなどを主な材料としているため、軽量であることが特徴です。
破れにくく伸縮性に長けているため、耐久性にも優れています。
しかし、紫外線に弱いという面も持つため、環境によっては耐用年数よりも早く劣化が進むこともあるでしょう。

ほとんど勾配がない陸屋根に使われることが多く、三角形のような形の勾配がある切妻屋根には適していないなど、
屋根の形状によって合う・合わないがあります。
比較的耐用年数が短いため、小まめなメンテナンスが必要といえます。

不織布ルーフィング│耐用年数:30年

耐用年数は、おおよそ30年の不織布ルーフィング。

基材に不織布を使用しているため、紙と比較して破れにくく、耐久性があります。
また、柔軟性にも長けているため、変則的な屋根に施工しやすいことも魅力です。
近年注目を集めているルーフィングのひとつとされています。

紙を使用したルーフィングと比較すると高価ですが、耐用年数が長いため、メンテナンスの回数を少なく抑えられるでしょう。

ルーフィングの耐久性は軽視されやすいが実は重要

直接雨風を受ける屋根材と比べ、耐久性を軽視されやすいルーフィング。
ここでは、ルーフィングの重要性を述べるとともに、なぜ軽視されがちなのかについてわかりやすく解説します。
ルーフィングへの理解を深めるきっかけにしてください。

ルーフィングの耐久性・耐用年数は屋根の寿命を左右する

繰り返しになりますが、ルーフィングの役割は、屋根材で防ぎきれなかった雨水を軒先へ流して排水することです。

ルーフィングがなければ、屋根材で防げなかった雨水を軒先へ流すことができず、野地板へ雨水が染み込んでしまいます。
その結果、屋根(下地材)が腐食して雨漏りを引き起こすなど、屋根の寿命を縮めることにつながるでしょう。
大切な家を雨漏りから守るためには、屋根材・ルーフィングによって雨水の室内への侵入を食い止める必要があります。

いくら品質のよい屋根材を採用していても、耐久性がなく耐用年数が短いルーフィングを選んでしまうと、
雨水が野地板や建物内部に侵入してしまう恐れがあります。

そのため、高品質・高耐久のルーフィングを選択することが大切です。
ルーフィングの耐久性・耐用年数が屋根の寿命を左右するといっても過言ではありません。

価格を抑えることに目が向けられがち

ルーフィングが軽視されやすい要因のひとつとして、価格を抑えることに目が向けられがちである点が挙げられます。

外から常に見えている屋根材とは異なり、ルーフィングは施工後目に触れることがほとんどありません。
そのため、あまり重視されず、品質の良さよりも安価なルーフィングが活用される傾向にあります。

特に分譲住宅や戸建住宅などはコストを抑えるため、最低限の基準を満たした低価格のルーフィングを用いるケースが多いでしょう。
業者によっては、きちんとした説明がないまま、自社で取り扱っている製品を使用することもあります。

ルーフィングによって耐久性や耐用年数、適した屋根材などが異なるため、コストだけで安易な選択をしないよう心掛けましょう。

業者に品質を担保する責任があるのは引き渡しから10年間のみ

品確法(住宅品質確保促進法)によって定められた瑕疵(かし)担保期間が10年であることも、ルーフィングが軽視されやすい要因のひとつとして考えられます。

品確法とは、以下の3つを掲げた「住宅の品質確保の促進等に関する法律」のことです。

  • 住宅の性能に関する表示基準や評価制度
  • 住宅にかかわる紛争処理体制の整備
  • 新築住宅における瑕疵担保期間

品確法によると業者が品質を担保する責任があるのは引き渡しから10年間となっており、
裏を返せば「10年間雨漏りしなければよい」と業者は捉えられるということ。

つまり、品質などには目を向けず、10年間雨漏りをしないための最低基準を満たした低価格のルーフィングを選択するケースがあると捉えられます。

耐用年数が長いルーフィングを選ぶメリット・デメリット

ルーフィングを選ぶ際、耐用年数の長さに目を向けることはもちろん大切です。
しかし、耐用年数が長いという理由だけで選択すると後悔してしまう可能性もあります。

ここでは、耐用年数が長いルーフィングを選ぶメリットとデメリットについて解説します。

メリット

耐用年数が長いルーフィングを選ぶメリットは、次の2つです。

  • 高耐久な屋根材とのメンテナンス周期を合わせやすい
  • 気候や災害などの環境変化・負荷に強い製品が多い

一般的に、瓦屋根なら10〜20年、スレート屋根なら5〜10年に1回の頻度でメンテナンス(漆喰補修や塗装など)が必要とされています。耐用年数の長いルーフィングであれば、屋根材のメンテナンスに合わせられるため、手間が少なくて済みます。

また、耐久性のあるルーフィングも多く、メンテナンスの回数を減らせることで、
結果的にメンテナンスにかかるコストを抑えることにもつながるでしょう。

デメリット

耐用年数が長いルーフィングを選ぶデメリットは、次の2つです。

  • 初期費用が高い
  • 1回ごとのメンテナンス費用が高い

さまざまな種類があるルーフィングは、基材が異なることで製造にかかるコストや時間にも違いがあります。
そのため、耐用年数が長いルーフィングは、初期費用が高い傾向にあります。
メーカーや使用する面積によっても異なりますが、設置後のメンテナンスも高額になる傾向です。

新築時にルーフィングのコストを抑えてあとから屋根材ごと高耐久に交換する方法も

ルーフィングは、初めからベストなものを採用しておくことが好ましいですが、
新築時には低価格のルーフィングを選択し、あとから高耐久のルーフィングに交換することも選択肢のひとつです。

この方法なら、比較的費用がかかるとされる高耐久のルーフィングを導入するための費用を工面する時間が稼げたり、
メンテナンスを行うタイミングで交換することで手間が省けたりします。
ルーフィングを葺き替えることを念頭に置いた上で、あらかじめ耐用年数が短い屋根材を選んでおくと、
屋根材も同時にメンテナンスできます。

ルーフィングのメンテナンス時期は耐用年数の1年前が目安

屋根材の下に敷くルーフィングは普段目に見えません。
そのため、たとえルーフィングが傷んでいても劣化に気付くことは難しいでしょう。

何も被害が出ていないからといって、耐用年数を迎える直前にメンテナンスをすれば良いと安易に考えていると、
大規模な台風や災害などに耐えられないかもしれません。

当然建物の立地や周辺の環境によっても異なりますが、もしもの場合に備え、
ルーフィングは耐用年数の1年前を目安にメンテナンスを施してください。

耐用年数の1年前であれば、時間のかかる施工業者の選定やスケジュール調整などもゆとりを持って行えます。
雨漏りなどの被害が出る前にメンテナンスすることで、大切な家を良い状態で長く保てるでしょう。

まとめ

私たちが普段雨漏りを気にせず安心して暮らせるのは、屋根材とともに、雨水から家を守ってくれるルーフィング(防水紙)のおかげです。
ルーフィングは材質によって種類がいくつかあり、耐久性や耐用年数、相性の良い屋根材などにも違いがあります。
それぞれの特徴を理解した上で適切なルーフィングを選択することが、快適な住まいづくりにつながるでしょう。

被害が出ていないからといってルーフィングの耐久性を過信するのではなく、
耐用年数の1年前を目安にメンテナンスを行うなど、家を守るためしっかりと対策を施すことも大切です。