火災保険は、火災や風災、ひょう災などによって外壁が破損し、補修が必要になった際に利用できる保険のひとつです。
しかし、保険適用となるにはさまざまな条件をクリアしなければなりません。
本記事では、外壁塗装に火災保険を適用するための条件や申請手順について解説します。
火災保険の種類についても紹介しますので、保険を利用して外壁の補修を行いたい方はぜひ最後までご覧ください。
- 目次
- 戸建住宅向け火災保険の種類
- 住宅火災保険
- 住宅総合保険
- 新タイプの保険
- 支払われる金額はどうやって決まる?
- 外壁塗装に火災保険が適用される条件について
- 1.損害から3年以内に申請を行うこと
- 2.災害による破損であること
- 3.補修費用が免責金額よりも高いこと
- 火災保険適用における注意事項
- 補償内容に風災・水害が含まれているか
- 地震の被害は火災保険で補償されない
- 経年劣化は、どんな保険でも適用されない
- 保険申請の一連の流れ
- ①業者に連絡し破損を確認してもらう
- ②工事の必要があれば見積書をもらう
- ③保険会社に申請をする
- ④保険会社の指示に従い必要な書類を準備・提出する
- ⑤鑑定人が自宅を調査し、受給の可否と補償金額が決まる
- ⑥受給が決定した場合に保険金が支払われる
- まとめ
戸建住宅向け火災保険の種類
まずは戸建住宅向けの火災保険の種類について見ていきましょう。
火災保険には主に次の3つがあり、それぞれ補償の範囲が異なるため、違いも併せて確認してください。
住宅火災保険
住宅火災保険は、火災保険のなかで最もスタンダードなタイプです。
火災による損害の他、「落雷」「爆発・破裂」「風災・ひょう災・雪災」などによって損害を被った場合にも補償が適用されます。
ただし、台風・暴風雨などによる洪水や土砂崩れなどの水災(水害)は補償対象外のため注意が必要です。
住宅総合保険
住宅総合保険は、住宅火災保険よりも補償範囲をさらに広げたタイプです。
具体的には住宅火災保険の補償範囲に加えて、以下が適用となります。
- 水災
- 水漏れ
- 盗難
- 暴行・破裂
- 落下・飛来・衝突
- 持ち出し家財の損害
洪水や床上浸水などによる水災、給排水設備の不良による水漏れ、騒動や暴動による壁の破壊など、
住宅にまつわる総合的な補償をカバーしています。
新タイプの保険
新タイプの保険は、住宅総合保険よりも補償内容がより充実している新しいタイプです。
さまざまな災害を想定し、従来の住宅総合保険ではカバーできないリスクにも柔軟に対応するため、
いわば「オールリスクタイプ」の保険と呼ばれています。
補償範囲や補償額がさらに拡大されており、条件を満たせば全ての損害が補償されます。
保険会社によって保険の名称や補償範囲は異なりますが、
たとえば以下のような補償内容が挙げられます。
- 工事の規模にかかわらず保険金が受け取れる
- 住宅の形態に合わせて補償内容を個別にカスタマイズできる など
加入者のニーズに応じて補償(契約)内容を選択できることは、手厚い補償を求める方に向いているでしょう。
支払われる金額はどうやって決まる?
火災保険が適用される場合に支払われる金額(保険金)は、
保険会社が家の被害状況を確認した上で決定します。
具体的には、外壁塗装(補修)を依頼する業者へ見積もりを依頼し、保険会社へその見積書を提出します。
その後、保険会社が委託する損害保険登録鑑定人による査定など段階を経て金額が決まるため、
火災保険加入者の希望額がそのまま支払われるわけではありません。
支払い金額が決定する前に補修工事をスタートすると、期待していた金額よりも補償が少なかった場合、
別途費用を工面する必要も出てくるため注意しましょう。
支払われる金額は、損害額(見積書の金額)が免責金額(保険会社が責任を負わない金額=自己負担額)を超えている必要があり、
免責金額が設けられている保険金の支払いには次の2つの方式があります。
- エクセス方式
損害額から免責金額を引いた金額が受け取れる - フランチャイズ方式
損害額が免責金額を超えていれば損害額と同等の金額が受け取れる
たとえば免責金額が20万円で損害額が30万円の場合、エクセス方式なら10万円、
フランチャイズ方式なら30万円が受け取れる計算です。
どちらの方式も損害額が免責金額を下回る場合、保険金は支払われません。
外壁塗装に火災保険が適用される条件について
保険に加入しているからといって、必ずしも保険金が支給されるとは限りません。
手続きのタイミングや補修が必要となった原因など、保険が適用されるためにはクリアすべき条件があります。
ここでは、外壁塗装に火災保険が適用される3つの条件について解説します。
1.損害から3年以内に申請を行うこと
外壁が被害を受けてから、3年以内に申請することが求められます。
保険法第95条によって保険金を請求する権利は、権利発生日の翌日から3年以内に行使しない場合、消滅すると定められているためです。
災害の規模によっては、損害から3年以上経過していても保険金を請求できるケースもありますが、
適切なタイミングで申請できるよう、日頃から外壁の状態を確認しておくことが大切です。
なお、火災保険を利用することなくすでに自費で外壁塗装を行った場合でも、保険会社によっては損害から3年以内であれば保険金が申請できます。
その際、施工時の請求書をもとに手続きを進めるため、請求書などは捨てずに保管しておきましょう。
参考:保険法「平成二十年法律第五十六号(第九十五条)」
2.災害による破損であること
外壁の破損原因が「災害」であることも、火災保険が適用となる重要な条件のひとつです。
たとえば、「台風や強風によって飛んできた屋根瓦が外壁に当たって穴が開いた」
「走行中の車からの落下物によって外壁に傷・汚れがついた」などは、災害による破損と認められるため、保険適用となります。
契約内容によっては、「排水管の破損によって水漏れが発生した」「自宅前での集団騒ぎによって破損した」などの場合も、補償の対象となります。
ただし、経年劣化や施工不良などによる損害では、火災保険は適用されないため注意が必要です。
3.補修費用が免責金額よりも高いこと
火災保険には、補修にかかる費用が一定の金額以下の場合、補償が適用されない「免責金額(自己負担額)」が設定されています。
そのため補償を受けるためには、損害による補修費用(損害額)が免責金額を超えている必要があります。
たとえば、補修費用が30万円、免責金額が20万円であれば問題ありません。
しかし補修費用が15万円、免責金額が20万円の場合は、補修費用が免責金額を下回っているため保険は適用されません。
火災保険による補償を受けるためには、補修費用が免責金額よりも高いことを確認しておきましょう。
火災保険適用における注意事項
火災保険を利用する際は、適用条件だけでなく補償内容や適用外となるケースについても理解しておく必要があります。
ここでは、火災保険の適用に関する主な注意事項を3つ解説します。
補償内容に風災・水害が含まれているか
契約プランの補償内容に、風災や水害が含まれているかどうか確認しましょう。
お住まいの地域によって多少差はありますが、「強風による飛来物で外壁や雨戸が破損した」
「集中豪雨により自宅が浸水して外壁が腐食した」というケースは十分考えられる事案です。
一般的な住宅火災保険の場合、風災はカバーされていますが水害に対する補償は適用外のため、
火災保険に加入しているからといって、必ずしも水害補償を受けられるとは限りません。
台風による被害を受けやすい、家の近くに川や海があり水害を受ける可能性が高いなど、
周辺地域の状況も踏まえた上で風災・水害が補償内容に含まれているか確認し、
必要があれば補償内容のアップデートを図るなどの対策を講じることが大切です。
地震の被害は火災保険で補償されない
地震によって被った損害は、火災保険の適用外となることも理解しておきましょう。
たとえば、「地震の影響によって外壁ががひび割れた」「地震により発生した津波によって建物が浸水した」ケースなどです。
地震によるこれらの損害は一般的な火災保険では補償されておらず、補償を受けるためには、別途「地震保険」に加入している必要があります。
しかし、地震保険のみの保険プランはないため、火災保険にプラスして加入し、補償をカバーしなければなりません。
日本は地震のリスクも高いといえるため、もしもの備えとして地震保険への加入を検討しても良いでしょう。
経年劣化は、どんな保険でも適用されない
火災や風災・雪災に加え、水災(水害)や盗難などもカバーするなら住宅総合保険や新タイプの保険(オールリスクタイプ)、
地震による損害もまとめてカバーするなら地震保険もセットで加入するなど、火災保険にはさまざまな種類、特約などがあります。
しかし、どれだけ手厚い保険に加入していたとしても、経年や老朽化を原因とする劣化には補償が適用されないことを押さえておきましょう。
たとえば、使用している外壁材特有の変質や変色といった性質による劣化、時間の経過とともに現れたコケやカビなどには、保険が適用されません。もちろん補修が必要となるような傷をわざとつけた場合や施工不良が原因とされる場合も適用外です。
たとえ経年や老朽化による劣化が自然災害による損害と比較して、
見た目に大きな差がない場合であっても、補償を受けることはできないと理解しておきましょう。
保険申請の一連の流れ
火災保険を受給するためには、保険会社へ問い合わせる以外にもさまざまな手順を踏む必要があります。
ここでは、保険の申請に必要な一連の流れを6ステップに分けて解説します。
①業者に連絡し破損を確認してもらう
まずは専門業者に連絡をして、家の破損状況の確認を依頼します。
プロに見てもらうことで、素人では気が付かない細かな部分にまで損害が及んでいる場合、見落としを防げるでしょう。
損害箇所を正確に把握することは、保険を申請する際の大切なポイントです。
「補修には火災保険の利用を検討している」と事前に伝えておくことで、業者によっては損害箇所の写真を撮るなど、
その後の対応がスムーズに進むようサポートしてもらえることもあります。
信頼できる外壁塗装業者に依頼して、破損状況を確認してもらいましょう。
②工事の必要があれば見積書をもらう
破損状況を確認後、補修工事の必要があれば見積書の作成を依頼します。
保険会社に火災保険を申請する際、見積書の提出が必要となるため忘れないよう気を付けてください。
なお、見積書をもらう際は、見積書の金額が免責金額を超えているかどうかも併せてチェックしておくと良いでしょう。
免責金額を超えていない場合、せっかく火災保険を申請しても保険金を受け取れないことがあります。
また見積額が適正かどうか見極めるため、複数の業者から見積書を取ることもポイントです。
信頼できる業者からの見積書であれば問題ないと思うかもしれませんが、外壁塗装の適正な金額がわからない場合は、
複数の見積書を比較・検討することをおすすめします。
③保険会社に申請をする
保険会社に災害によって被害を受けたことを報告し、火災保険申請の手続きを行います。
保険会社によって多少異なりますが、その際は次の内容を確認されることが多いです。
- 家の被害状況(損害の程度や原因)
- 被害がいつ発生したか
- 保険証券番号
- 保険の契約者氏名
- 工事を依頼する業者 など
電話やインターネットなど問い合わせ方法によっても異なりますが、スムーズな受け答えができるよう、事前にメモを取っておくと安心できるでしょう。
わからないことがあれば、すぐに質問できるよう確認したい事項を準備しておくこともおすすめです。
④保険会社の指示に従い必要な書類を準備・提出する
保険会社へ連絡後は、事前に申告した被害状況などを事実だと証明する書類や保険金請求書など、
申請に必要な書類を指示に従って準備し、提出します。
提出が求められる主な書類は、以下の通りです。
- 保険金請求書
- 工事見積書
- 被害箇所がわかる写真
- 事故内容報告書
- 印鑑証明書
- 罹災証明書
- 建物登記簿謄本 (登記事項証明書) など
保険金請求書は、保険会社から郵送されるケースや各自でWEBサイトからダウンロードするケースなどさまざまです。
保険の契約者名や保険金の振込口座情報などを記入することが一般的ですが、記載内容や形式は保険会社ごとに異なります。
必要書類に漏れがある場合、再度書類の提出を求められるなど申請の完了までに時間がかかる可能性があるため注意してください。
⑤鑑定人が自宅を調査し、受給の可否と補償金額が決まる
提出した書類をもとに保険会社による審査がスタートします。
ヒアリングのみの場合もありますが、保険会社から派遣される損害保険登録鑑定人(以下、鑑定人)によって現地調査が行われることもあります。
提出した書類と実際の被害状況に相違がないか、本当に災害による損害かどうかなどを確認した上で受給の可否と補償金額が決定するため、「申請手続きさえすればOK」というわけではありません。
なお、鑑定人によっては申請をしても「災害ではなく経年劣化による損害」と判断され、火災保険の受給に至らないケースもあります。
鑑定人は、被害状況や事故原因の調査、損害額の算定などを行う専門のプロのため、保険金目当てに、決して虚偽の申告はしないよう注意してください。
⑥受給が決定した場合に保険金が支払われる
鑑定人による被害状況の確認を経て、「火災保険を受給する資格がある」と判断されれば、保険金が支払われます。
ただし請求金額より補償金額が減額されるケースもあるため注意しましょう。
保険会社から契約者宛てに火災保険の受給可否や補償金額の通知が届き、内容に合意した場合に請求手続きを行います。
なお、保険金の支払いは「請求手続きの完了から30日以内」が原則となっていますが、
災害の規模が大きく被害が甚大な場合などは、保険の請求が集中して支払いが遅れることもあります。
保険金を工事費用の支払いに充てたい場合は、その点も加味してスケジュールを組むことが大切です。
まとめ
外壁塗装に火災保険が適用される条件は、損害の原因が「災害」であることです。経年劣化や老朽化による補修は補償されません。
その他にも、「損害を受けてから3年以内の申請が必要」「補修金額が免責金額よりも高い」
といった条件もあるため、自宅の損害は火災保険の適用となるか正しく見極めましょう。
外壁の損害が保険金でまかなえれば実費負担を抑えられるため、
日頃から外壁の状態を確認し、必要に応じて専門業者や保険会社へ連絡してください。