外壁塗装に用いられる塗料の中でも、「外壁の雰囲気を変えずにリフレッシュしたい」「既存のデザインを損ねることなく塗装したい」といった希望を叶えられるのがクリア塗料です。クリア塗装(クリア塗料を用いた塗装)なら、元のデザインや色、柄、風合いなどを維持したまま外壁を保護できます。
本記事では外壁のクリア塗装の特徴について詳しく解説します。
外壁をクリア塗装できないケースやおすすめのクリア塗料についても紹介しますので、クリア塗装を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
- 目次
- 外壁をクリア塗装するメリット4選
- (1)もともとの外壁のデザインを活かして仕上げられる
- (2)艶出しができて美しく仕上がる
- (3)チョーキング現象が発生しない
- (4)工期の短縮と費用の低減ができる場合がある
- 外壁をクリア塗装するデメリット3選
- (1)他の塗料よりも耐久性が低い傾向にある
- (2)外壁にひび割れや傷がある場合、透けて見えてしまう
- (3)クリア塗装できない外壁がある
- 外壁をクリア塗装できないケースとは?
- CASE1.外壁の劣化が進んでいる場合
- CASE2.外壁に特殊なコーティングが施されている場合
- CASE3.コーキングが施されている場合
- 外壁塗装に用いるクリア塗料の種類と費用相場は?
- 外壁塗装におすすめのクリア塗料をご紹介
- ピュアライド UVプロテクトクリヤー|日本ペイント
- SKシリコンクリヤーW|エスケー化研
- パワーアシストクリヤー|水谷ペイント
- まとめ
外壁をクリア塗装するメリット4選
ホワイトやグレー、ベージュなどさまざまなカラーがある中で、外壁塗装に「クリア」を選択する方は少なくありません。
まずは、外壁をクリア塗装することでどのようなメリットが得られるのか、分かりやすく解説します。
(1)もともとの外壁のデザインを活かして仕上げられる
クリア塗装は色のついていない透明なクリア塗料を用いるため、元のデザインを活かしたまま外壁を保護できることがメリットのひとつです。レンガやタイル・ストーン調といったデザイン性の高い外壁や、柄・模様が描かれた外壁などに使用しやすいでしょう。もちろん既存の外壁の色もそのまま残せます。
たとえば幼稚園や保育園など、子ども向けのイラストを外壁に描いている場合、クリア塗料以外を用いるとせっかくのイラストを塗りつぶしてしまうことになりますが、クリア塗料ならイラストを残したまま外壁を保護できます。新たにイラストを描く必要がなく、元のイメージを壊す心配もありません。
色付きの塗料には決して真似できない、外壁の素材やデザインを活かした塗装が可能です。
(2)艶出しができて美しく仕上がる
外壁のデザインを活かしたまま新たに艶を与え、見た目を美しく仕上げられることもメリットです。外壁に付いた汚れを落とすだけでは新築時のような輝きを出すことは難しいですが、クリア塗装して艶を出すことで外壁が明るくなり、新築時のような輝きを取り戻せるでしょう。
クリア塗料の艶の度合いは、大きなものから順に、以下の5種類があります。
- 艶あり
- 7分艶
- 5分艶
- 3分艶
- 艶消し
艶の度合いは光の反射率によって種類が分かれますが、それぞれの反射率(数値)は明確に定まっていません。そのため、艶の見た目が同等程度の塗料でも、あるメーカーでは5分艶塗料、別のメーカーでは3分艶塗料と表現されることもあります。
それぞれの塗料メーカー(製品)ごとに艶の度合いが異なることも併せて理解しておきましょう。
(3)チョーキング現象が発生しない
外壁の劣化症状のひとつでもあるチョーキングが発生しないこともうれしいメリットです。
チョーキングとは、外壁を手で触ったときに白い粉が付着する現象のこと。白い粉の正体は塗料に含まれる顔料で、紫外線の刺激を受けることで外壁の表面に露出します。
しかしクリア塗料にはこの顔料が含まれていないため、チョーキング現象が起こる心配はありません。チョーキングによって発生した白い粉は肌や洋服などに付着すると落ちにくいため、はじめから汚れの付着が避けられるクリア塗料は安心して使いやすいでしょう。
ただしチョーキングは外壁の劣化サインでもあるため、チョーキングが発生しないことで劣化に気が付きにくくなる可能性もあり、注意が必要です。
(4)工期の短縮と費用の低減ができる場合がある
色付きの塗料を用いる場合と比較して塗装工程が少ないため、工期が短縮でき、費用の低減につながることも特徴です。
色付きの塗料で外壁を塗装する場合、下塗り→中塗り→上塗りの計3回の塗装が基本となりますが、クリア塗装では下塗りを行いません。1回目と2回目にクリア塗料を塗布する、計2回の塗装で完了します。塗装回数が少なくなることで塗料の乾燥にかかる時間が短く、さらに使用する塗料も少なくて済みます。
足場の設置や養生、外壁の洗浄、下地処理といった作業工程に大きな違いはありませんが、
塗装回数の違いによって工期の短縮と費用が抑えられる可能性があることは十分魅力といえるでしょう。
外壁をクリア塗装するデメリット3選
クリア塗装には多くの利点がある一方で、条件次第では不利になる点も存在します。
クリア塗装を本当に行うべきか適切な選択をするために、デメリットについても確認しておきましょう。
(1)他の塗料よりも耐久性が低い傾向にある
塗装工程の違いにより、クリア塗料は他の塗料よりも耐久性が低い傾向にあります。
下塗りを含む計3回の塗装が基本となる他の塗料と比較して、計2回の塗装で完了するクリア塗料は、外壁に重ねる塗膜が1層分薄くなるからです。外壁塗装では塗料を重ね塗りすることで塗膜を厚くし、外壁をより強力に保護していますが、塗装回数が少ないことで塗膜が薄くなり、その結果耐久性も低下するとされています。
耐久性が低ければその分、次のメンテナンスまでのスパンが短くなるため他の塗料よりも早く塗り替えを行う必要が生じ、手間やコストが増える可能性もあります。
同じ外壁塗装を施すにしても、色付きの塗料とクリア塗料で耐久性に差が生まれることはデメリットといえるでしょう。
(2)外壁にひび割れや傷がある場合、透けて見えてしまう
クリア塗料は透明なため、塗装後も外壁の状態は丸見えです。外壁にひび割れや傷、洗浄しても落ちない汚れなどがある場合、せっかく塗装を施してもクリア塗料ではそれらを隠すことができません。アイボリーやグレーなどの色付きの塗料とは異なり、見えてほしくない傷や汚れを塗りつぶして隠せない点はデメリットといえます。
また外壁を修復した跡なども透けて見えるため、補修・塗装を施しても新築時のような傷のないきれいな状態に戻すことは難しいでしょう。
傷や汚れが透けて見えると決して見栄えが良いとはいえないため、外壁に目立つ傷や隠しきれない汚れなどがある場合、クリア塗装は避けたほうが無難です。
(3)クリア塗装できない外壁がある
すべての外壁に対してクリア塗装できるわけではありません。外壁の劣化状況や既存の外壁に用いられている塗装(コーティング)などによっては、クリア塗料を使用すると塗料が剥がれやすくなったり、期待通りの仕上がりにならなかったりする場合があるからです。
このことを知らずにクリア塗料を使用したいと希望しても、「対応できない・他の塗料にしたほうがよい」と業者から断られてしまうこともあるため注意しましょう。
さまざまな塗料が存在する中、外壁塗装において使用できる外壁が限られてしまうことはクリア塗装を行う上でのデメリットといえます。
外壁をクリア塗装できないケースとは?
前述の通り外壁をクリア塗装できないケースや不向きなケースがあります。
ここでは、クリア塗装できないケースを具体的に3つ挙げ、その理由や対処法も併せて解説します。
CASE1.外壁の劣化が進んでいる場合
1つ目は、外壁の劣化が深刻化している場合です。
たとえばチョーキング現象が進んでいる場合、そのままクリア塗装すると塗膜が白く濁って白ボケを起こす可能性があります。白ボケが発生するときれいな元の状態に戻すのに時間と手間がかかるだけでなく、見た目も悪くなってしまうため、クリア塗装には向いていません。
チョーキング現象が進行している中でどうしてもクリア塗装を施したい場合は、クリア塗料を使用する前に一度、色付きの塗料で塗装するなどの工夫が必要です。ただしその分、工数・コストが増えることや、元の色・質感が変わる可能性があることには注意してください。このことを理解していないと、せっかくクリア塗料を選択してもクリア塗装によるメリットが得られないかもしれません。
CASE2.外壁に特殊なコーティングが施されている場合
2つ目は、光触媒やフッ素、無機などの特殊なコーティングが外壁に施されている場合です。
これらの塗料はいずれもクリア塗料が付着しにくく、上から塗装しても塗膜がすぐに剥がれてしまう可能性があります。場合によっては、本来の耐用年数よりも早く寿命を迎えてしまうこともあるため、クリア塗装には向いていません。
既存の外壁にはどのようなコーティングがされているのか、事前に確認しておくことが大切です。
しかしながら、光触媒やフッ素などの特殊塗料に対応できる下塗り材を用いることで、クリア塗装が可能になるケースもあり、必ずしもクリア塗装ができないわけではありません。
クリア塗装を検討している場合は、一度専門業者に相談してみることをおすすめします。
CASE3.コーキングが施されている場合
3つ目は、外壁にコーキング(シーリング)が施されている場合です。
コーキングは、ゴムのような弾力のあるコーキング材を外壁のつなぎ目や隙間に充填することで、外壁材のズレやひび割れ、雨水の侵入などを防ぐといった役割を果たします。
しかしコーキングの上からクリア塗装すると、コーキング材の劣化につながるだけでなく、塗膜が汚れたり剥がれたりするリスクもあるため、クリア塗装は推奨されていません。クリア塗装を行う際は、塗料が付着しないようコーキング部分をしっかりと覆うなどの配慮が求められます。
さらに、クリア塗装はコーキングが透けて見えることで美観にも影響を与えるため、実施する際はこれらの点を慎重に考慮する必要があるでしょう。
外壁塗装に用いるクリア塗料の種類と費用相場は?
外壁塗装に用いるクリア塗料には主に5種類あり、それぞれの費用(㎡単価相場)は次の通りです。
種類 | 費用(㎡単価相場) |
---|---|
アクリル塗料 | 1,400~2,000円 |
ウレタン塗料 | 1,700~2,500円 |
シリコン塗料 | 2,200~3,500円 |
フッ素塗料 | 3,000~5,000円 |
無機塗料 | 3,500~5,500円 |
クリア塗料は種類によって価格が異なりますが、これらは耐用年数や性質に違いがあるからです。
たとえば、表内で最も安価なアクリル塗料の耐用年数が5~8年であるのに対し、アクリル塗料よりも高価なシリコン塗料の耐用年数は10~15年が目安とされています。
塗料の耐久性が上がるにつれて価格も高くなりますが、その分塗装頻度は少なくて済むため、長期的なメンテナンスコストは抑えられるでしょう。
さらにクリア塗料は下塗りをせず計2回の塗装で完了することから、色付きの塗料で施工するよりも塗料代や施工にかかる人件費などを抑えられる傾向にあります。
クリア塗料を選択する際は、単に価格だけを比較するのではなく、各塗料の耐久性や特性、ランニングコストなどにも注目してみてください。
外壁塗装におすすめのクリア塗料をご紹介
数あるクリア塗料の中からおすすめの塗料を3つ紹介します。
「どのメーカーからどのような製品が販売されているか分からない」「まずはおすすめの製品が知りたい」という方はぜひチェックして、塗料選びの参考にしてください。
ピュアライド UVプロテクトクリヤー|日本ペイント
高意匠サイディングへの塗装を想定し、高耐候性を実現したクリア塗料(2液型)です。
紫外線による色あせなどの劣化を極力抑える紫外線吸収機能に優れているほか、超低汚染性や防藻・防カビ性、透湿性などの特長も併せ持っています。
艶の度合いには、艶あり・3分艶・艶消しの3種類があり、好みに合わせた艶調整が可能です。
光触媒サイディングボード以外のサイディング各種に使用でき、模様の美しさを長く維持することに長けています。
SKシリコンクリヤーW|エスケー化研
アクリルシリコン樹脂を採用することでポリウレタン樹脂系塗料よりもさらに耐久性が高まったクリア塗料です。1液型のため、2液型のような主剤と硬化剤を混ぜ合わせる手間がなく、使いやすいでしょう。
塗装を施してから次の塗り替え時期までの目安(耐用年数)は12~15年と長く、高い耐久性・耐候性を誇るほか、低汚染性の発揮によって汚れが付きにくく長期にわたって美観を維持できる点が特長です。艶の度合いには、艶あり・3分艶の2種類があります。
石材調塗材や多彩模様塗料などを保護する上塗り材に適しています。
パワーアシストクリヤー|水谷ペイント
耐候性・耐久性の高いシリコン変性樹脂を主とするクリア塗料(2液型)です。
独自の開発技術(リアルシリコンテクノロジー)で作り上げたシリコンは、雨風から外壁をしっかりと保護し、外壁の劣化原因となる紫外線を効果的に遮断(UVカット)する高い機能性を備えています。艶の度合いには、艶あり・3分艶の2種類があります。
窯業系サイディングボードに用いられる専用塗料で、サイディングボードの高級感や質感を長持ちさせることが特長です。
まとめ
クリア塗装には、元の外壁デザインを活かしたまま仕上げられる・工期の短縮や費用の低減ができる場合があるなど、うれしいメリットがいくつもあります。
しかしその反面、ひび割れや傷があると透けて見える・条件によってはクリア塗装できない外壁があるなどのデメリットも存在するため、外壁をクリア塗装する際は、長所と短所をどちらも理解しておきましょう。
また使用するクリア塗料によって費用は異なるため、耐用年数や特性などの違いを比較しながら適切な塗料を選んでください。