鉄板(金属)屋根の種類|修理前に知っておくべき特徴や選び方

私たちの生活の拠点である住居を守るには、屋根について理解することが大切です。
現代では古くからある瓦のみならず、金属も積極的に用いられています。
ただし金属も種類が数多くあり、どれを選べばよいか迷う人は少なからずいるでしょう。

この記事では鉄板屋根の種類と選ぶ際のポイントを紹介しつつ、具体的な葺き方についてもまとめています。
屋根の修理もしくは新築工事の依頼を検討している人は、記事を参考にしたうえで業者に相談してみてください。

鉄板(金属)屋根の種類とそれぞれの特徴

鉄板(金属)屋根は、種類によって特徴や強みが大きく変わります。
ここでは7つの種類について、どのようなメリットがあるかを説明します。
解説を参考にしながら、自身の環境に合った屋根の種類を選んでください。

トタン板|屋根や外壁に広く利用されていた

トタン板とは、薄く加工された鋼板に亜鉛メッキが施されている素材です。
ガルバリウム鋼板が登場するまでは、屋根や外壁に広く利用されていました。

軽量な素材であるため建物への負担は少なく、耐震性能に優れている点がメリットです。
また初期コストも比較的抑えられるほか、たいていの施工業者に採用されています。

しかしサビが発生しやすいデメリットもあり、メンテナンスの回数は増える傾向にあります。
ランニングコストを抑えたく、耐用年数の長いものを望んでいる人は避けたほうが賢明です。
また遮音性や断熱性が低くなる点もデメリットです。

ガルバリウム銅板|錆びにくくて耐久性が高い

ガルバリウム鋼板は、アルミニウム(55.0%)・亜鉛(43.4%)・シリコン(1.6%)を含んだ合金を基盤とする屋根材です。
コストパフォーマンスが良く、日本でも積極的に採用されています。

さまざまなメリットがありますが、なかでもサビにくくて耐久性が高いのがポイントです。
劣化スピードが遅い屋根材であり、メンテナンスの回数も比較的少なくなります。

またガルバリウム鋼板は軽量なため、耐震性にも強みを持っています。
ほかにも断熱性や遮音性が高いなど、屋根選びで重視したいポイントを兼ね備えている屋根材です。
上品かつシンプルな見た目も特徴で、さまざまな種類の建物にもマッチします。

しかし塩害には弱いため、潮風が当たりやすい海沿いで生活している人には推奨されていません。

ジンカリウム鋼板|長期間再塗装しなくていい

ジンカリウム鋼板に使われている成分は、基本的にガルバリウム鋼板と同じです。
主成分はアルミニウム(55.0%)・亜鉛(43.5%)・シリコン(1.5%)であり、配合もわずかな違いしかありません。

一方でガルバリウム鋼板と大きく異なるポイントは、ジンカリウム鋼板には無数の石粒がコーティングされていることです。
これらの石粒が金属を塩分から守り、塩害に強くなります。ほかにも断熱性と遮音性をより一層高めてくれるのも強みです。

しかし機能性が優れているゆえに、導入コストはどうしても高くなってしまいます。
また普及度も低く、採用している業者はあまり多くありません。

銅板|メンテナンスが不要

銅板は一般的に寺社で採用されることの多い屋根材です。
文字通り「銅」を用いており、風情のある特徴を持っています。

銅板の主なメリットは、メンテナンスがほとんど必要ない点です。
寿命は60年以上ともいわれており、耐久性にも優れています。
長く使い続けていると、色が次第に青緑色へと変化します。
こちらは腐食を防ぐといった良い働きを持つ、緑青が生じるためです。

ただしデメリットとして、酸性雨によって穴が開く可能性があること、遮音性および断熱性の低さが挙げられます。
特に熱には弱く、熱伸縮により形が歪んでしまう恐れもあります。
また銅板を扱える職人が少ない点にも注意が必要です。

アルミ板|加工性が高い&環境に優しい

アルミ板はアルミニウムを施した屋根材のことです。
加工性が高く、スレート型・折板型・瓦型と大きく分けて3つの形状があります。

主なメリットとして挙げられるのが、環境に優しい素材である点です。
アルミ素材はリサイクルができるため、地球温暖化対策にも優れています。
また耐久性と耐震性の双方において強みを持っているのも特徴です。

しかしアルミ板には、断熱性が低いといったデメリットもあります。
金属は基本的に熱を通しやすい性質を持ちますが、なかでもアルミニウムは熱伝導性の高い種類として挙げられます。
さらにジンカリウム鋼板や銅板と同様に、施工できる業者が少ないのも難点です。

ステンレス板|錆びやすい環境におすすめ

ステンレス板は、鉄を中心にクロムやニッケルも含んでいる屋根材です。
サビにくいのが特徴であり、一般的にメンテナンスフリーな素材となっています。
耐用年数も長く、50年は持つとされています。

ほかにもメリットとして考えられるのは、軽量な素材であることです。
建物にかかる負担も少なく、耐震性は比較的高くなります。

一方で、外部からの刺激により表面が傷つきやすいデメリットもあります。
台風やひょうの影響で傷ついた場合、劣化スピードも早まるため注意しましょう。

また、施工に手間がかかり、初期費用も高くなりやすいです。

チタン板|強度がかなり高く高額

チタン板は、鉄板屋根のなかでもトップクラスの耐久性を誇る種類です。
軽量な素材であるものの、強度は鋼とほとんど変わりません。建物を頑丈にしたい場合に使われるのがポイントです。

またサビにくかったり、潮風の被害も受けにくかったりするメリットがあります。
酸性雨にも強く、気候変動による劣化がほぼ見られない点が強みです。
修繕する機会は少ないことから、ランニングコストも抑えられるでしょう。

ただしチタン板は1回の施工費用が高額であり、採用している業者も少ないといったデメリットもあります。
戸建住宅にはあまり普及しておらず、寺社や大型施設といった建物に使われています。

鉄板(金属)屋根の種類を選ぶ際にチェックしたいポイント

鉄板屋根の素材をみても、何を優先すればいいか迷う人もいるでしょう。
全ての屋根材に共通してチェックしたいポイントは、機能性とデザイン性です。
これらの観点について、具体的に説明しましょう。

寿命の長さ

鉄板屋根を選ぶうえで、まず重視してほしいポイントは寿命の長さです。
一度住宅を購入すれば、一生涯にわたって住み続ける人も少なくありません。

屋根材は消耗品であるため、いつかは交換または修繕するタイミングが来ます。
ただしその頻度が高くなると、何度も施工業者に依頼するのが煩わしく感じてしまうでしょう。

あらかじめ耐用年数の高い種類を選べば、交換や修繕までのスパンが長くなります。
しかし屋根材の寿命は、地域の気候にも影響される点に注意が必要です。
気候との相性も考慮したうえで、長持ちしそうな屋根材を探してみてください。

コストパフォーマンス

屋根選びにおいて寿命の長さと合わせてチェックしたいポイントが、コストパフォーマンスです。
初期コストとランニングコストの双方の観点から、屋根材を選択する必要があります。

一般的に寿命の長い屋根材は、初期コストも高くなります。
反対にランニングコストは抑えられるものの、そもそもの価格が高くて選ぶのが難しいと感じることもあるでしょう。
屋根材の寿命とコストのバランスが大切です。

また施工業者によっても、設定している価格は細かく異なります。
屋根材だけではなく、業者選びもコストパフォーマンスを意識するうえで重要な要素となります。

施工性

鉄板屋根を選ぶうえで、意外と見落としてしまうポイントが施工性です。

施工性は「施工しやすいかどうか」を指しており、低いものは仕上がりが業者の腕に左右されやすくなります。

上質な素材を選んでも、完成度が低ければ雨漏りなどのトラブルに見舞われる可能性もあります。
また施工性の高低は、工期の長さに影響を与えるのも押さえたいポイントのひとつです。

そのため屋根選びにおいては、業界でも広く浸透している屋根材を選ぶことが求められます。
特にガルバリウム鋼板は複雑な形状をした建物にも対応でき、メンテナンスも簡単であるため施工性の観点からもおすすめです。

デザイン性

鉄板屋根は、種類によってデザイン性にも違いがあります。
例えばジンカリウム鋼板の場合、石粒でコーティングされているため独特な雰囲気を作り出します。
金属特有の光沢を出したくない人は、こちらの種類を選んでみるとよいでしょう。

高級感のある素材を選びたい場合は、ステンレス板の屋根もおすすめです。
重厚感があり、落ち着いた雰囲気のある見た目になります。

和風や洋風のどちらにもマッチしているのが、ガルバリウム鋼板です。
シャープなデザインが特徴であり、カラーバリエーションも豊富であるといった特徴があります。

鉄板(金属)屋根の葺き方の種類

鉄板屋根は、素材だけではなく葺き方によっても機能性に変化が見られます。
また建物全体のイメージも変わるため、どのように葺くかも考えておきたい要素のひとつです。
ここでは、具体的な葺き方について解説しましょう。

縦葺き

縦葺きは、棟(屋根の頂上)から軒先まで縦方向に葺く方法です。
地面と垂直なラインとなり、ストライプ(縦じま)のような見た目となります。

主なメリットは、地面方向にラインが伸びているため雨水が雨樋へ流れやすくなることです。
また全体的に長尺であり、施工期間が短くなるといった強みもあります。

しかし屋根材の形状が複雑であると、縦葺きを採用できません。
ガルバリウム鋼板のように、シンプルな素材を使う際に向いています。

横葺き

横葺きは縦葺きとは反対に、地面と平行方向に葺く方法を指します。
縦葺きよりも一つひとつの屋根材が小さく、これらを合わせる形で葺くのが特徴です。

こうした特徴から、縦葺きと比べて遮音性が高くなるといった強みを持ちます。
デザインもまた豊富であり、複雑な形状の屋根材でも採用できる点もメリットのひとつです。

しかしラインが横向きになるため、雨水が屋根に溜まりやすくなります。
雨漏りを考慮すると、採用するには屋根の勾配が2.5寸〜3寸以上必要とされています。

平葺き

平葺きは、小さく加工した屋根材を重ね重ねに葺く工法です。
葺き方のバリエーションも豊かで、漢字の「一」の形(一文字葺き)や亀の甲羅の形(亀甲葺き)などがあります。

平葺きのメリットは、さまざまな屋根の形状に対応できる点です。
汎用性が比較的高く、一般住宅以外にも寺社や大型施設にも採用されています。

ただし小さい屋根材を一つずつ重ねていく作業となるため、ほかの方法と比べて手間がかかってしまうのがデメリットです。

菱葺き

菱葺きはひし形に屋根材を葺く工法であり、平葺きの一種に含まれます。
ひし形はモダンでオシャレなイメージを与えやすく、デザイン性にこだわっている人にはおすすめです。

また菱葺きは、内部に水が入りにくくなるメリットもあります。
雨漏りのみならず、屋根をサビから守りたい場合にも向いています。

一方で平葺きの一種であることから屋根材のサイズは小さく、
縦葺きと比べると手間がかかる点がデメリットです。

瓦型

鉄板屋根も、プレス機器を用いると瓦のように曲面の形状を作れます。
葺き方は大きく縦タイプと横タイプの2種類に分けられます。

見た目は瓦屋根とほとんど変わらず、落ち着いた雰囲気を作り出すのがポイントです。
一方で金属であることから、一般的な瓦屋根よりも耐震性に優れているメリットもあります。

ただし金属瓦は、初期コストがかかりやすいのがデメリットです。
導入するまでのハードルが高いため、慎重に検討するのをおすすめします。

折板

折板とは、波状に金属を折りたたんでいる状態のことです。
戸建住宅のほか、学校の体育館や工場などでよく用いられます。

平面の状態よりも、折りたたんだほうが屋根の強度は増します。
そのため耐久性が高くなりやすいのがメリットです。
平葺きとは異なり長めの屋根を使用することから、工事も短期間で終わりやすくなります。

ただし折板屋根には、基本的に断熱材を使用しません。
ほかの葺き方と比べると、断熱性が低くなりやすいのがデメリットです。

鉄板(金属)屋根を長持ちさせるには

鉄板屋根を長持ちさせる方法は、定期的なメンテナンスを怠らないことです。
いくら耐久性の高い屋根材を使用しても、全く劣化しない種類はありません。
特に外部から刺激され、表面に傷が付いたら劣化スピードも早まります。

定期的に施工業者へ屋根をチェックしてもらえば、傷んでいる箇所を修繕できます。
メンテナンスせずに放置し続けていると、屋根の交換が必要になってしまうので注意してください。

また素人だけで屋根の状況を確認するのは避けてください。
高所での作業となり、一歩間違えれば転落などの事故が発生する恐れもあります。

さらに素人では劣化している部分を正確に捉え、正しくメンテナンスするのはほぼ不可能です。
プロである施工業者に見てもらい、最善の方法を提案してもらいましょう。

まとめ

ガルバリウム鋼板を中心に、鉄板屋根は日本でも積極的に採用されています。
ただし同じ金属でも、素材によって特徴は大きく異なります。
それぞれの強みと弱みを理解し、建物や地域との相性も見ながら屋根材を選ぶことが大切です。

加えて鉄板屋根は、葺き方によっても建物に与える影響が変わります。
施工業者の手腕にも左右されるため、どの葺き方を選ぶかはしっかりと相談したうえで決めましょう。

工事が終わったあとも、屋根の寿命をできる限り延ばすべく定期的なメンテナンスを心がけてください。