屋根の漆喰について徹底解説|修理費用の目安は?DIYはできる?

住宅のあらゆる場所で使われている「漆喰」。
しかし、壁や天井などの目立つ場所だけでなく、屋根の一部としても使われていることをご存じでしょうか。

本記事では、屋根に使われる漆喰の重要性や寿命について解説します。
漆喰が劣化したときに現れる症状や修理費用の目安なども併せて紹介しますので、
自宅の屋根に漆喰が使われている方はぜひ最後までお読みください。

屋根の「漆喰とは」

漆喰(しっくい)は、焼いた石灰石に水を混ぜた「消石灰(水酸化カルシウム)」を主原料とする建築材料です。

住宅の壁や天井の塗り材としてはもちろんのこと、屋根の一部にも活用されており、
身近な建築物のさまざまな箇所で使われています。

ただし屋根に使用されるのは瓦屋根の場合のみで、ガルバリウム鋼板やスレートなどその他の屋根材には使用されません。

主に瓦屋根の「棟」と呼ばれる屋根の面と面が交差する山形の頂部に塗り込まれており、
棟を見上げたときに、白く半月状になっている部分が漆喰です。
漆喰は、土葺き(つちふき・どぶき)と呼ばれる伝統的な工法においては、
棟と瓦の間の隙間埋めや瓦同士の接着材として活用されているなど、瓦屋根にとってはなくてはならない存在です。

なぜ屋根に漆喰が必要なのか?重要性を解説

屋根にとって漆喰が重要視される理由は、瓦屋根の設置に使われる「葺き土(ふきつち)」と呼ばれる粘土状の土を保護する役割があるからです。

歴史ある古い建物などでは、葺き土の粘着力を利用して瓦を屋根に接着しています。
しかし葺き土は、時間の経過とともに乾燥して粘着力が弱まり、通常の砂と変わらないパラパラとした状態に変化してしまいます。

特に棟部分は直接雨風にさらされるため、少しでも劣化を遅らせるためには葺き土を保護しなければなりません。

そこで葺き土を保護する役目を担うのが漆喰です。
上から塗って覆うことで、漆喰は葺き土を雨風から守る重要な役割を果たしています。

さらにその結果、瓦のズレや落下を防ぐことができ、美観を保つことにもつながっているのです。

屋根の漆喰の寿命は?

屋根の漆喰の寿命は、おおよそ20~30年です。

瓦屋根の設置に併せて使用されるため、瓦と同等の耐久性があると考えている方も多いかもしれません。

しかし瓦(日本瓦)の寿命が50年以上あるのに対し、漆喰の寿命はおおよそ半分です。
「自宅の屋根は瓦だから耐久性がある、まだまだ屋根のメンテナンスは不要」と考えて漆喰の状態に見向きもしないでいると、
気が付いた頃には想像以上に劣化が進んでいたということも考えられるため注意しましょう。

もちろん地域環境やさまざまな要因によっては、寿命より早く劣化が進むこともあります。
例えば、激しい雨風や寒暖差、強い直射日光、地震による振動などの影響が挙げられます。

耐久性の高い瓦のように漆喰の寿命を長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが必要です。

修理の目安かも?屋根の漆喰が弱ってきている目安となる症状

瓦屋根にとって重要な役割を果たす屋根の漆喰は、時間の経過とともに少しずつ劣化していきます。
屋根の漆喰が弱ってきている目安となるのは、次の3つです。

  • 剥がれ
  • ひび割れ
  • 変色

漆喰の状況や補修のタイミングに悩む方は、ぜひチェックしてください。

剥がれ

漆喰の内側にある葺き土が露出している状態が「剥がれ」です。

屋根を見上げたときに、瓦の隙間から葺き土が見えていたり、
地面に剥がれた漆喰が落ちていたりすることで気が付くことが多いのではないでしょうか。

剥がれは、地震や強風によって建物が揺れたり、雨水が葺き土へ侵入して乾燥と湿潤を
反復したりすることで漆喰と葺き土の間に隙間ができるために起こります。

漆喰の剥がれが一部であれば、すぐに雨漏りなどの影響が出るわけではありません。
該当部分のみ漆喰を塗り直すことで補修も可能です。

しかし剥がれが広範囲に及ぶ場合は、部分補修ではなく全体的に修理が必要となる可能性もあります。

ひび割れ

漆喰の劣化の初期に現れる症状が「ひび割れ」です。

調湿作用を持つ漆喰は、湿気を取り込んだり放出したりしながら時間をかけて少しずつ硬くなっていきますが、
その過程でひび割れることがあります。

地震や強風などによる建物の振動によってひび割れたり、
割れた部分が雨風にさらされることでさらに欠けたりすることもあるでしょう。

ひび割れの程度が軽微であれば、雨漏りにつながる可能性はほとんどありません。
屋根や葺き土に大きな影響が及ぶことはないため、補修は不要です。

しかしひび割れはそのまま放置していると剥がれにつながる恐れがあるため、
ひび割れの程度が激しくなってきた場合は、補修することが好ましいです。

修理が必要かどうか判断に困る場合は、業者に相談してください。

変色

漆喰は経年劣化により黒っぽく「変色」して見えることがあります。

漆喰の下にある葺き土に雨水が入り込んで、コケやカビが発生していることが原因です。
そのまま手を加えずにいると、コケやカビが漆喰の表面についた雨水をどんどん吸収し、ますます増殖します。
コケやカビが繁殖を繰り返すことで、さらに雨水が内部へ侵入することとなり、雨漏りのリスクも高まるでしょう。

黒っぽく変色した漆喰では本来の機能も果たさないため、補修の対象となります。
屋根の漆喰部分が黒く変色している場合、「掃除をしていないから汚れている」と安易に考えるのではなく、
漆喰の変色=劣化と捉えるよう注意してください。

屋根の漆喰を修理しないことによる悪影響

漆喰の劣化の目安となるひび割れ・剥がれ・変色などの症状に気が付いても、
「これくらいなら大丈夫」と対処せずにいた場合、住宅にはどのような影響があるのでしょうか。

ここでは、屋根の漆喰を修理しないことによる悪影響について、3つ解説します。

家の基礎である台土が崩れる

1つ目の悪影響は、棟の台土が流出して崩れてしまうことです。

台土とは、棟を積むための土台となる葺き土のことで、
家に例えると基礎の部分にあたる重要なポジションです。

漆喰が劣化すると葺き土を適切に保護することができず、葺き土がむき出して直接雨風に打たれることになります。
すると葺き土は雨風によってどんどん削られていくため、その結果棟瓦を支える台土が崩れてしまいます。

台土の流出は棟瓦を支える熨斗瓦(のしかわら)にズレや歪みを引き起こすため、屋根全体の劣化にもつながるといえるでしょう。

漆喰の寿命は20~30年程度とされていますが、寿命を全うするまでの間にも必要に応じて定期的に補修を行うことが、
台土の流出を防ぐカギとなります。

瓦が抜け落ちる

2つ目の悪影響は、瓦が抜け落ちることです。

漆喰が劣化すると台土が流出することで瓦がズレて、その隙間から雨水が内部へ入り込みます。
雨水が侵入すると葺き土が風化されるため、瓦と漆喰の接着が弱まりその結果、
瓦がさらにズレる・抜け落ちるなどの影響が現れます。
もちろん強風や地震などの振動によって、瓦がズレたり抜け落ちたりすることもあります。

注意しなければならないのは、たとえ瓦が抜け落ちていても気が付きにくいことです。
庭先から屋根を見上げただけではなかなか発見できないため、
少し離れた距離から屋根を眺めるなど、屋根の状態を定期的に確認することが大切です。

雨漏りにつながる

3つ目の悪影響は、台土の流出や瓦の抜け落ちなどを経て最終的に雨漏りにつながることです。

雨漏りがする=屋根の内部に雨水が入り込んでいる状態のため、
漆喰だけでなく屋根材の下にあるルーフィング(防水紙)も劣化している可能性があります。

漆喰やルーフィングの補修だけで済む場合もありますが、雨水によって屋根の下地が腐食している場合、
大がかりな修繕が必要になる可能性もあると理解しておきましょう。

屋根の下地も補修するとなれば当然費用も高くなるため、被害を最小限に抑えるには
少しでも早く漆喰の劣化に気付くことが大切です。

定期的な点検はもちろんのこと、万が一雨漏りが発生したら気が付いたタイミングで
早めに業者へ修理を依頼することを心掛けましょう。

屋根漆喰工事の手順

ひび割れや剥がれなど漆喰の劣化が軽微であれば、「漆喰の詰め直し工事」で対応できます。
棟瓦(棟積みの一番上にある瓦)を取り外したり、新たに台土を作り直したりする必要がないため、それほど期間も要しません。

工事の手順は次の通りです。

  • 古い漆喰を取り除く
  • 葺き土を整える
  • 新しい漆喰を詰める

基本的には、古い漆喰を取り除いて新しい漆喰を詰め直すというわかりやすい作業です。
しかし古い漆喰を取り除いた後に、細かな漆喰の残骸を刷毛でキレイに掃除したり、
瓦がズレている場合は直したりして葺き土を整えることが工事後の見栄えにも影響するため、丁寧に行う必要があります。

一見難しい作業はなく思えるため素人でもできると思いがちですが、漆喰は硬すぎると塗りにくく、
反対に軟らかすぎても垂れて塗りにくいため、素人が扱うことは難しいでしょう。
屋根の漆喰補修は素人が簡単にDIYできるものではないため、補修の必要があれば業者に依頼することが賢明です。

屋根漆喰工事を依頼する業者の選び方

屋根の漆喰工事を依頼する業者を選ぶポイントは次の3つです。

  • 実績があるか
  • 工事中の写真を撮ってくれるか
  • アフターケアが充実しているか

業者の選定に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

実績があるか

1つ目のポイントは、屋根の漆喰工事に関する十分な実績があるかどうかです。

屋根の補修を行う業者は、全国にいくつも支店を構える大手企業から地元の地域密着型の企業までさまざまです。
しかしその中には、漆喰工事の経験や知識がない企業、知識はあっても経験値が少ない企業なども存在します。

企業名を聞いたことがあるという理由だけで依頼先を選ぶのではなく、きちんと施工実績があるかどうか確認してみましょう。

何度も漆喰工事を経験した業者であれば、施工した分だけ漆喰工事に関するノウハウが蓄積されており、高い技術も伴っています。
住宅ごとに漆喰の劣化状態を見極め、適切に対処してくれることでしょう。

工事中の写真を撮ってくれるか

2つ目のポイントは、工事中の写真を撮影し、必要な情報を適宜提示してくれるかどうかです。

屋根の漆喰補修は、素人ではわからないことがほとんどです。
ましてや屋根の上は目にする機会も少なく、工事の進捗具合も簡単に確認することができません。
工事状況を写真に収め、屋根の漆喰の状態や補修によるビフォー・アフターをきちんと見せてくれる業者だと安心できるでしょう

業者の中には工事中1枚も写真を撮らず、適切な説明もないまま工事を終えるところもあります。
依頼主が劣化状態を正しく把握できないことをいいことに、虚偽の工事報告をする業者がいないとも限りません。

そのため、工事中の写真を撮ってくれる業者を選ぶことも重要なポイントのひとつです。

アフターケアが充実しているか

3つ目のポイントは、アフターケアが充実しているかどうかです。

屋根は雨や雪、強風、日差しによる紫外線などの影響を、24時間365日受け続けています。
そのため、施工後いつ不具合が起こるかわかりません。
万が一に備え、施工完了後の対応についても確認しておきましょう。

業者によって具体的なサービス内容や保証期間は異なりますが、
施工技術に自信を持っているからこそ施工後の保証を充実させられるとも捉えられます。
アフターケアの有無を事前にチェックし、内容が充実している業者を選ぶと良いでしょう。

屋根の漆喰の修理にかかる期間・費用の目安

修理する範囲や施工内容によって異なりますが、屋根の漆喰補修にかかる費用相場は次の通りです。

  • 積直し:1万6,000円~1万9,000円/m
    主に「棟部」の漆喰補修では積直しを推奨しています。
    ※瓦の段数や飾り・勾配などによっても金額は変動し、さらに棟部の長さが10m未満の場合は割高になることもあります。
  • 重ね塗り:3,000円~5,000円/m
    「壁と瓦との取り合い部」における漆喰補修です。

漆喰の破損状況(範囲や部分)・施工内容によって異なるため、
部分補修については5万~10万円が費用の目安と考えておくと良いでしょう。
※上記の費用目安に加え、別途足場代も必要となります。

なお、屋根の漆喰工事にかかる期間は1日~1週間が目安です。
費用同様、屋根の状態によって異なるため業者へ依頼する際に確認してください。

まとめ

この記事では、屋根の漆喰の重要性や寿命について解説しました。

屋根の漆喰は棟の葺き土を守り、美観を保つ役割を果たす瓦屋根の大切なパートナーです。
瓦よりも耐久性は低いため、瓦と同じタイミングでメンテナンスを施すのではなく、寿命は20~30年と覚えておきましょう。

ひび割れや剥がれ、変色などの劣化が見られたら、DIYでなんとかしようとせず業者へ相談してください。
早めに対処することが、瓦の抜け落ちや雨漏りといった住宅への被害を防ぐことにつながります。