【屋根の各部位の名称まとめ】頂上はなんていうか知ってる?

屋根は、雨や日差しから建物を守ってくれる欠かせない部位です。
一口に屋根といってもさまざまな部位があり、極めて複雑な構造になっています。
屋根全体が機能するには、全ての部位が正常な状態でなければなりません。

この記事では、屋根の部位の名称と特徴について紹介します。
加えて、屋根材の種類やそれぞれのメリット、デメリットについてもまとめています。
しっかりと屋根の各部位や屋根材について押さえたうえで、施工業者に依頼するようにしましょう。

屋根の各部位の名称

屋根の部位は、全部で100種類以上に分けられます。
素人がこれらを全部覚えるのは難しいため、ここでは特に重要な部位を取り上げます。
名称だけではなく、各部位がどのような役割を担うのかも押さえてください。

棟(むね)

棟とは、屋根の面と面が合わさる部分を指します。
雨水の侵入を防いだり、熱を逃がしたりするのが主な役割です。

棟には金属屋根では棟板金、瓦屋根であれば棟瓦を被せます。
瓦屋根の場合、施工時に消石灰を主原料とする漆喰(しっくい)を詰めることで、雨風をよりしのげるようになります。

棟板金を留める際には釘(クギ)が使われることが多いですが、劣化による緩み(釘抜け)には注意が必要です。
釘抜けを放置すると隙間から雨水が入りやすくなるほか、最悪の場合は台風によって屋根が吹き飛ばされてしまいます。

したがって定期的に確認する必要がありますが、高所での作業になるので必ずプロの業者に依頼してください。

軒先(のきさき)

軒先は、建物の外壁よりも突き出ている屋根の先端部分のことです。
雨水が直接窓に当たることを防いだり、紫外線の侵入から守ったりする役割を持ちます。
また物干し竿を設置して、洗濯物を干すといった使い方も可能です。

基本的に軒先は地面に水平に設計されます。
流れてきた雨水をスムーズに流さないと腐敗が進んでしまうため、
雨樋(あまどい)も設置して溜めた状態にしないよう工夫しましょう。

軒先がない(軒ゼロ)もしくは短い住宅もありますが、こちらは室内を広くできるメリットがある一方で、
雨漏りのリスクも高まります。

軒天(のきてん)

軒天とは、軒先の裏側の部分を指します。
そこに取り付けられるボードを、軒天ボードと言います。
軒天井や軒裏天井とも呼ばれており、雨水や小動物の裏側からの侵入を防ぎます。
換気口のある有孔ボードを使えば、排気ができるようになります。

軒天は、軒先から流れてきた雨水が触れやすい部位です。
雨水などの影響で腐朽して雨漏りしやすくなります。
ほかにも鳥が巣を作ることもあるため、定期的にチェックしましょう。

ケラバ

軒先を正面から見た場合、その側面で、外壁より出っ張っている部分がケラバです。
軒先の見え方が地面と平行になるのに対し、ケラバは斜めに見える部分で、形状は屋根の種類(切妻や片流れ)によって異なります。
なお切妻は逆V字型、片流れは一方向に傾斜している形状のことです。

ケラバも雨水から外壁を守ったり、日光の量を調整したりするといった役割を担います。
デザイン重視でケラバを出さない住宅もありますが、機能性を求める場合は取り入れたほうが賢明です。

破風板(はふいた)

破風板とは、屋根の側面(妻側)に設置される板のことです。
屋根裏に雨風が侵入するのを防ぐ役割があります。
ほかにも火災が発生した際に、延焼スピードを抑えられるため住宅を守るうえで重要な部位です。

破風板は目立たないところにあり、劣化に気付かないことも少なくありません。
さらに雨風の影響を受けやすく、長い間メンテナンスを怠ると劣化がどんどん進んでしまいます。
雨漏りするだけではなく、破風板そのものが落下する恐れもあるので定期的なチェックが欠かせません。

雪止め

雪止めは、落雪を防ぐべく屋根に取り付ける金具です。
もし屋根に溜まった雪が落ちると、隣地で育てている植物を傷つけるなど民事的なトラブルに発展する恐れもあります。

また屋根に溜まった雪が軒先や雨樋のほうに流れてしまい、雪の重さに耐えられず破損してしまうケースもあります。
つまり建物自体を雪から守るうえでも役立つ部材です。

一方で豪雪地帯では雪下ろしの邪魔になるため、あえて設置しない住宅も少なくありません。
住宅への負荷や降雪量を考えたうえで、設置するかどうかを決めることをおすすめします。

鼻隠し(はなかくし)

鼻隠しは、軒先側に貼り付ける板を指します。
破風板と混同しやすいですが、破風板の場合は妻側に設置されるといった違いがあります。

鼻隠しの主な役割は、建物の耐風性を高めることです。
屋根は浮力に弱く、内部に強風が吹き込むと屋根は飛ばされやすくなります。
鼻隠しは風の侵入を防ぎ、屋根を守る働きがあります。

基本的に鼻隠しは、雨樋の下地部分に設置されるので雨水からは守られやすい部位です。
しかし風の影響は受けやすいことから、ビスや釘の具合はしっかりと見てもらわなければなりません。

ルーフィング

ルーフィングは、野地板と屋根材の間に敷く防水シートを指します。
ルーフィングの主な役割は、雨漏りから野地板を守ることです。

屋根材はどうしても隙間が生まれてしまうため、完璧に雨水の侵入を防げるわけではありません。
ルーフィングは、二次防水として重要な役割を担います。

屋根材と異なり、ルーフィングは目視では確認できないため、耐用年数(交換時期)をしっかりと覚えておきましょう。

雨樋(あまどい)

雨樋は、軒先に溜まった水を外に流す部位のことです。
主に外部に設置する外樋と、屋根の内側に設置されて外からは見えない内樋の2種類があります。

形状も半円型や角型などがあり、デザインが豊富な点もポイントのひとつです。
元々は半円型が一般的でしたが、より多くの雨水を流せる角型が現代では定番となりつつあります。

雪国で暮らしている人は、雪や氷に強い特殊型を選ぶとよいでしょう。
低温による破損を防ぎやすくなり、ランニングコストも抑えられるようになります。

庇(ひさし)

庇は、玄関ポーチや窓の近くに取り付けられる小さい屋根です。
主屋根とはつながっておらず、独立して設けられています。

雨除けになったり、強い日差しの侵入を防いだりするのが主な役割です。
日差しをカットする遮光タイプのみならず、ある程度の光を取り入れる採光タイプもあります。

さらに砂ぼこりが窓枠に溜まり、それが雨水に押し流されると外壁が汚れてしまいます。
砂ぼこりを溜めないようにするのも、庇が持つ働きのひとつです。

下屋根(げやね)

下屋根(差し掛け屋根)とは、主屋根より下がった位置に設置された屋根を指します。
設置される場所は、2階建て住宅の1階部分にあたる外壁です。
庇と似ていますが、場所によって名称が使い分けられます。

2階建てのような高い住宅は、主屋根だけでは1階部分の外壁を雨から守れません。
雨漏りは、屋根だけではなく外壁からも起こります。
外壁からの浸水を防ぐには、下屋根もしっかりと設置したほうが効果的です。

一方で接合部分に隙間が生じると、逆に雨漏りのリスクを高めてしまいます。
シーリングを強化するなど、定期的なメンテナンスは必要です。

雨押え(あまおさえ)

雨押えは、屋根と外壁の接合部に取り付けられる部材のことです。
屋根や外壁は、複数の材料を組み合わせて作ります。
その際接合部には雨水が入りやすくなるので、雨漏りしないように雨押えで隙間をしっかりと埋めます。
浸水を防ぐだけではなく、効果的に排水するのも役割のひとつです。

雨押えの素材は、ステンレスがよく使われます。
数多くの部位に設置されているため、全てを点検するのは極めて困難です。
部分的かつ迅速に補修が必要であれば、防水コーキングでも対処できます。
とはいえあくまで応急処置であるため、最終的なメンテナンスでは雨押えの交換が必要です。

谷(たに)

谷とは、複数の屋根を合わせた際に生じる凹んだ接合部(溝)のことです。
切妻や片流しのようなデザインであれば、基本的に谷はありません。
複数の屋根が複雑に合わさったり、M字型の形状で設計したりした際に見られます。

溝の部分は谷樋とも呼ばれ、雨樋と同じく雨水を外に流す役割があります。
雨水による腐食が進みやすい部位でもあるため、サビに強いステンレスやガルバリウム鋼板が板金部材としてよく使用されます。

腐食が進んでいるかどうかは、屋根の上に登らなければほとんど確認できません。
素人だけでチェックしようとせず、必ずプロの施工業者にメンテナンスも含めて任せるようにしましょう。

屋根に使われている屋根材(仕上げ材)の名称

屋根材にもさまざまな素材が使われており、何を採用するかで建物に与える影響も変わります。

住居は一般的に長年使用するものであるため、耐久性(耐用年数)や耐震性、断熱性などといった要素を考慮しなければなりません。
ここでは、各屋根材のメリットおよびデメリットを解説しましょう。

瓦屋根

瓦屋根は、古くから日本家屋で使われることの多いタイプの屋根材です。
主に粘土を焼いて精製し、断熱性や耐久性が高いといったメリットがあります。
また遮音性の高さにより、雨音が室内に響きにくいのも利点のひとつです。
瓦屋根はデザインも豊富であり、オリジナルの住居が欲しい人にも推奨されています。

一方でほかの屋根材と比べると重量があり、建物に与える負担は大きくなります。
そのため大きな地震が起こると、倒壊のリスクを高めてしまうのがデメリットです。
地震で瓦が落下することにより、周囲にいる人をケガさせるリスクもあります。

トタン屋根

トタン屋根は、高度経済成長期に多くの人が採用した屋根材です。
鋼板に亜鉛メッキが施されており、比較的軽量な素材となっています。
建物に与える負担も少なくなり、耐震性能が高まりやすくなるのがメリットです。
また施工しやすい素材でもあり、多くの施工業者が採用しています。

しかし外部からの刺激には弱く、耐久性は比較的低いのがデメリットです。
サビが生じやすい素材でもあり、メンテナンスの回数は高くなるでしょう。
初期コストはある程度抑えられるものの、ランニングコストが高くなりやすい屋根材です。

スレート屋根

スレート屋根とは、厚さ5mm程度のフラットな屋根材を指します。
主成分はセメントであり、人工の種類は化粧スレートとも呼ばれています。

こちらの素材のメリットは、デザイン性が豊富でオシャレな点です。
カラーバリエーションにも富んでおり、好みに合った外観を作りやすいといった強みがあります。
多くの施工業者が扱っており、簡単にメンテナンスできる屋根材です。

しかしスレート屋根はひび割れを起こしやすく、耐久性はそこまで高くありません。
メンテナンスの頻度も高くなるため、ランニングコストは比較的かかってしまうでしょう。

ガルバリウム鋼板屋根

ガルバリウム鋼板は、アルミニウム・亜鉛・シリコンでメッキが施されています。

主なメリットは、サビに強く耐久性に優れている点です。
加えて瓦と比べると軽量であり、耐震性にも強みを持っています。
このように建物全体の寿命を高められることから、急速に普及している屋根材の一種です。

デメリットとして挙げられるのは、塩害に弱い点です。
潮風が当たってしまうと、サビが生じやすくなってしまいます。
沿岸地域に住んでいる人は、これらの弱点もしっかりと押さえてください。

ジンカリウム鋼板

ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板と同じくアルミニウム・亜鉛・シリコンでメッキが施されています。
表面には石粒がコーティングされており、一風変わったデザインとなるのが特徴です。
基本的な性質はガルバリウム鋼板と変わりませんが、石粒の影響で塩害に強くなります。
潮風の当たる沿岸地域でも、サビが発生しにくいのが主なメリットです。

ただし強風により、表面の石粒が落ちることもあります。
雨樋に石粒が溜まってしまうと、清掃がやや面倒になります。
また性質的に断熱材を取り入れられないため、断熱性を重視している人も注意が必要です。

アスベスト含有屋根

アスベスト含有屋根は、文字通り屋根にアスベスト(石綿)が含まれている屋根材です。

アスベストは健康被害が問題となったことで、2006年9月から建物に使用するのが全面禁止となりました。
そのため新規の建物についてはアスベストを使用できませんが、それ以前の建物については含まれている可能性があります。

主なメリットとして挙げられるのが、耐久性が高いことです。
アスベストによってひび割れが起こりにくくなり、屋根の寿命を延ばすうえで役立ちます。

ただしアスベストが含まれているのを知らずに工事してしまうと、
周囲にいる人々が粉じんを浴びる可能性があるため注意が必要です。
なお2022年4月から原則として全ての建築物の工事を対象に、アスベストの事前調査が義務化されました。

アスファルトシングル

アスファルトシングルとは、ガラス繊維とアスファルトの素材に石粒がコーティングされている屋根材です。
アメリカを中心とした海外で多く使われており、ジンカリウム鋼板よりも安価であるといった特徴があります。

こちらの素材の強みは、防水性や耐久性に長けている点です。
柔軟性があるためひび割れも起こりにくく、さらに石粒が雨音を緩和させてくれます。

一方で強風の影響を受けやすく、石粒が剥がれてしまうと劣化するスピードも早くなるのが弱点です。

まとめ

この記事では、屋根の各部位の名称や特徴について詳しく紹介しました。
屋根選びでは、どの屋根材を採用するかも大切です。
ただし長期にわたって住宅を守るには、部位をしっかりと施工業者に確認してもらう必要があります。

これらが全て機能することで、初めて快適な暮らしができるようになります。
なるべく多くの部位についての知識を自分自身でも押さえつつ、
どのように新設あるいはメンテナンスするかを施工業者と決めるようにしましょう。