外壁塗装のDIYは可能?「一部だけなら自分で……」その判断危険かも

住宅の外壁が古くなったものの、塗装工事はなるべく費用を抑えたいと考えてはいませんか。
「一部だけなら自分でできる」と思うかもしれませんが、自分一人で工事するのは危険です。

この記事では、外壁塗装のDIYをおすすめしない理由について紹介します。
外壁塗装を自分で行う危険性を理解しつつ、正しい工事にはどのような準備が必要になるのかを押さえてください。

外壁塗装のDIYは可能?おすすめしない理由

外壁塗装のDIYを自分だけで行うのは、できる限り避けたほうが賢明です。
工事のクオリティが下がるだけではなく、ケガをするリスクにもつながります。
ここでは、なぜ外壁塗装のDIYをおすすめしないのかを解説しましょう。

高さたったの2mでも危険をともなう作業である

外壁塗装をDIYしないほうがよい理由は、転落事故を起こす可能性があるためです。
1階部分の外壁であれば、高さは約2m程度であるため危険性がないと思うかもしれません。

しかし塗装は基本的に脚立を使って行い、常に上向き方向を見ながら作業する必要があります。
加えて、作業中は両手がふさがっている状態になります。
この状態でバランスを崩し、脚立から転落したら2mの高さでも大ケガにつながる危険性は十分あるでしょう。

ケガを負って治療費が発生すれば、結果的にコストの負担は大きくなってしまいます。

仕上がりが綺麗にならない可能性も高い

DIYでの外壁塗装は、仕上がりが綺麗にならない可能性が高いといえます。
塗装は塗り方も重要ですが、プロの場合は準備の段階から万全の体制を整えます。
洗浄や養生(不要な部分に塗料が付かないようにビニールで覆う作業)も正しく行わないと、仕上がりは決して良くなりません。

作業に使用する道具も専門的なものが多く、これらを全て使いこなすには経験がカギを握ります。
一見簡単そうに見えるかもしれませんが、見た目以上に塗装は奥が深いことを押さえてください。

長持ちせず結局やりなおし

外壁塗装を自分で行ったために、長持ちしなくなるケースも考えられます。
下地処理もせずにただ塗るだけでは、塗料がすぐに剥がれ落ちてしまいます。
また塗り方にも手順があり、その順番を正しく守らないと当然長持ちはしません。

加えて施工業者の使用している塗料は、市販のものと比べて耐久性が高い傾向もあります。
初期コストはDIYのほうが安上がりになるかもしれませんが、
ランニングコストで考えれば施工業者に依頼したほうが負担は少なくなります。

「一部だけのDIYなら」と思った方は注意!余計なコストが発生することも!

現代ではインターネットで外壁塗装の手順を簡単に検索できることから、
「一部だけなら少し調べればDIYできる」と勘違いする人は現れやすいといえます。

一部の補修に対して、わざわざ施工業者を呼ぶのは面倒と感じる人もいるでしょう。

しかし自分で作業を行ったがために、外壁の劣化を早めてしまう場合も少なからずあります。
また壁の異常に気が付かず、補修が必要な場所を放置した場合、建物全体の寿命にも悪影響を与えるでしょう。
結果的に大々的な工事が必要となり、通常の外壁塗装よりも請求金額が大きくなるケースも考えられます。

外壁塗装を完ぺきにこなすにはネットで調べた知識だけでは足りず、技術や経験が求められます。
今後の生活に支障が出てしまうので、一部の補修においてもプロの業者を頼りましょう。

外壁塗装DIYで考えられるトラブル例は?

外壁塗装のDIYは、完成度が低くなるだけではなくさまざまなトラブルを引き起こす恐れがあります。
自分一人に留まらず、周囲の住民にも迷惑がかかりかねません。
具体的にどのようなトラブルが起こりやすいかを紹介します。

足場を作らずケガをする

塗装を必要とする外壁が建物の2階部分であれば、高さは約6〜7mにものぼります。
この高さはハシゴだけで対処できるものではなく、足場を設ける作業が必要です。

足場を作るのが面倒だからといって、ハシゴだけで作業するのは大変危険です。
転落するリスクが高まり、6〜7mの高さから落ちれば命に関わる事故にもつながりかねません。

また足場はノウハウのない人が簡単に作れるものではありません。
上手く組み立てられずに足場ごと崩壊した場合、周囲を事故に巻き込む恐れがあります。

近隣トラブルが起こる

ほかにも外壁塗装のDIYで起こりうるリスクは、近隣トラブルです。
具体的に起こるトラブルとして、以下のケースが考えられます。

  • 作業の音がうるさい
  • 塗料の臭いが近所にも充満している
  • 塗料が跳ねて隣家の外壁や車を汚した

施工業者の場合は事前に近隣住民と挨拶を交わし、作業音や臭いについて丁寧な説明を行います。
また施工業者は養生を正しく行うため、隣家にまで塗料を跳ね飛ばすといったミスは基本的にしません。
近隣住民と良好な関係を築きたいのであれば、DIYは避けたほうが賢明です。

【工程別】外壁塗装DIYの難しさ|業者との違いも

具体的に外壁塗装の何が難しいのか、以下の工程別にまとめます。

  • 高圧洗浄
  • 養生
  • 下地処理
  • 塗装
  • 仕上げ

また素人が一般的に行う作業を、施工業者のやり方と比較しながら説明します。
それぞれの違いをしっかりと押さえてください。

高圧洗浄

まず外壁塗装を行う前には、高圧洗浄機を使って掃除しなければなりません。
高圧洗浄機は家庭用も販売されていますが、強力なサビを落とすには業務用を使う必要があります。
業務用は水圧が16MPaほどであり、家庭用(2〜8MPa)と比べても2〜8倍もあるのが特徴です。

家庭用でも十分な注意が必要ですが、特に業務用は水に触れると皮膚が裂けるなどのケガにつながります。
水圧を上手く調整できないと外壁も傷みやすく、結果的に建物全体の寿命を縮めてしまいます。

養生

先程も養生について説明しましたが、こちらは基本的に大掛かりな作業となります。
確認すべきポイントも多く、素人が簡単に貼れるものではありません。
養生のやり方が悪いと仕上がりに悪影響が及ぶだけではなく、周囲にも迷惑がかかってしまいます。

養生を行ううえで、特に求められるのがマスキングテープの扱い方です。
マスキングテープを扱う技術は簡単に得られるものではなく、経験や慣れも必要となります。

下地処理

塗装を行う前には、外壁のヒビ割れ(クラック)を補修しなければなりません。
この作業を下地処理と呼びますが、こちらも素人にとっては難しい作業のひとつです。

外壁に合った素材でクラックを埋めなければ、すぐに剥がれ落ちてしまいます。
どの素材が適しているかを、素人が自分で判断するのは簡単ではありません。

クラックが大きい場合は、サンダー(木材や金属の研磨などに用いる電動工具)を使って削る作業も必要です。
かしこちらもやり方を誤れば、外壁に穴が空いて雨漏りしやすくなります。

塗装

塗装に欠かせないのは塗料選びです。
塗料にもさまざまな種類があり、アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などによって性質が異なります(詳しい内容は後述)。

また塗装作業で使用する量も、どの種類を選ぶかで大きく変わるのも注意点のひとつです。
製品ごとに「厚さ」の基準があり、壁全体を均一に塗るのは簡単ではありません。

さらに押さえておきたいのが塗装時間です。
一般的に下塗り・中塗り・上塗りの工程を経ますが、乾燥時間や重ね塗りのタイミングも考慮しなければなりません。

仕上げ

大方の塗装が終わったら、養生を外して仕上げに移ります。
雑に扱うとこれまでの塗装作業がやり直しになる場合もあるので、慎重さが求められる作業です。

しっかりと塗装できていないところがあれば、仕上げのタイミングで修正します。
塗り残しは見た目が悪くなるだけではなく、太陽光や雨水の影響で外壁の劣化を早めてしまうためです。
しかし経験の少ない素人は、修正が必要な箇所を簡単には見つけられません。
なお作業してから時間が経過すると、プロでも塗り残しを発見しにくくなるので注意が必要です。

正しい外壁塗装のやり方は?

どうしても自分で外壁塗装をしなければならない人に向けて、正しい工程を簡単に紹介します。
とはいえ何度も説明しているとおり、小規模な作業でも基本的には施工業者に依頼したほうが賢明です。
余程の緊急事態であり、施工業者を探す時間もないなどの理由がない限りはDIYを避けましょう。

外壁塗装の工程は、大きく以下の10ステップです。

  • 足場を設置する
  • 高圧洗浄機による外壁の洗浄
  • 乾燥(およそ1日は必要)
  • 養生
  • 下地処理(クラック補修・目地の補修・サビ取り)
  • 下塗り
  • 中塗り
  • 上塗り
  • 養生の解除(上塗りが乾いたタイミング)
  • 足場を解体する(周囲の住民に挨拶も行うとよい)

これらの作業を全て行うには、専門用具をしっかりと揃えておかなければなりません。
準備期間も含めると、より多くの時間を要するでしょう。

正しい塗り方

外壁塗装の塗り方は「下塗り→中塗り→上塗り」の3段階に分けられます。
下塗りは「外壁のヒビの補修」「中塗り・上塗り用の塗料との密着」の2点において欠かせない作業です。
下塗りをしっかりと行わないと、塗装にムラが出やすくなり塗料が剥がれてしまいます。
下塗りが終わったら、乾燥させたうえで中塗りと上塗りをします。

塗り方には、大きく分けてローラー工法と吹き付け工法があります。
ローラー工法は、ローラーを使って手で塗装する作業方法です。

一方で吹き付け工法とは、機械を使ってスプレーのように塗装します。
ローラーと比べて手間がかからないといった強みもありますが、
扱いに慣れていないと塗り方にムラが出やすくなるのがデメリットです。

外壁塗装DIYに使用する道具は?

外壁塗装に使用する道具には、主に以下の種類があります。

  • 高圧洗浄機
  • 変成シリコンコーキング(外壁のヒビを補修する道具)
  • サビ取り用のブラシ
  • サンドペーパー(ブラッシング後の表面を滑らかにする)
  • サンダー(大きなクラックがあった場合)
  • 養生シート・マスキングテープ
  • ローラー・バケツ・塗料(※ローラー工法用)
  • 刷毛(ハケ)
  • スプレーガン(※吹き付け工法用)
  • ヘルメット
  • 軍手(塗料が手に付くのを防ぐ)
  • 防じんマスク(塗料の吸い込みを防ぐ)
  • ゴーグル(塗料が目に入らないように)
  • 雑巾・ナイロンタワシ

また溶剤系を用いるのであれば、それを希釈するためにシンナーが必要となります。
足場を組み立てる際には、木材製や金属製の足場材も用意しなければなりません。
このように一人で全てを揃えるとなれば、多くの日数を要するでしょう。

外壁塗装で必要な塗料も解説

下塗りと中塗り・上塗りとでは、使用する塗料が異なります。
ここでは、それぞれに使われる塗料の名称と特徴を説明します。
業者選びにおいても役立つ知識であるため、ある程度は押さえておくとよいでしょう。

下塗り用の塗料

下塗りで用いる塗料は、大きく分けて3つの種類があります。

塗料 特徴
シーラー 「シール」のように外壁のヒビ割れなどを塞ぎ、
上塗りが染み込みすぎないようにする役割を持つ
プライマー 役割はシーラーとほとんど変わらないが、
プライマーは一般的に金属系の下地に使われる
フィラー コンクリート材のように凸凹した素材に使われることが多く、
ヒビ割れを直しながら平らにならす役割を持つ

どの種類を選ぶかは、中塗り・上塗りに使われる塗料との相性も確認することが大切です。

中塗り・上塗り用の塗料

中塗りと上塗りは、それぞれ同じ塗料を用いても問題ありません。
これらの作業で使う塗料には大きく4種類あり、特徴および耐用年数が異なります。

塗料 特徴 耐用年数
アクリル ・塗料の中でも最も安価で購入できる

・安価な分耐久性は低い

5〜7年
ウレタン ・下地との密着性が高く、
どの素材にも扱いやすい

・紫外線に弱く変色を起こしやすい

8〜10年
シリコン ・比較的耐久性が高く、
酸性雨や紫外線にも強い

・粘膜が硬くなる分ヒビ割れもしやすくなる

10〜15年
フッ素 ・耐久性に優れている

・高価である

15〜20年

どの種類を選ぶかは下地との相性や好みにもよりますが、中塗りと上塗りのそれぞれで色を変えるのは避けましょう。
経年劣化により見栄えが悪くなるほか、密着しにくくなって耐久性が低くなるためです。

外壁塗装DIYのメリット・デメリットおさらい

ここで外壁塗装をDIYするメリットとデメリットをまとめます。

DIYのメリット ・各工程のタイミングを押さえていれば、スケジュールを自分である程度は調整できる

・塗料や道具を自分で選べるので好みに合わせて塗装できる

・問題なく外壁塗装を終えられれば費用は抑えられる
(しかし素人が不備なく終えるのは極めて難しい)

DIYのデメリット ・外壁塗装に必要な道具を自分で揃えなければならない

・プロの業者よりも完成度が低くなりやすく、見栄えが悪くなることも

・道具を上手く扱えず、周囲の住民に迷惑がかかる場合もある

・脚立や足場から転落して大きなケガを負うリスクもある

・作業のやり直しやケガの治療費により結果的に業者へ依頼するより費用が高くなる場合も考えられる

無理せず信頼できる業者に依頼しよう

外壁塗装のDIYには、さまざまなリスクが付きまといます。
この記事でも外壁塗装に必要な道具や塗料を紹介しましたが、専門的なものも多く正しく使用しないと外壁が傷んでしまいます。

もし記事を読んで「もう少し詳しく記載されていないと、
どうすればいいかわからない」と感じたら、自分一人で作業するのは避けたほうが賢明です。

また外壁の状態は、一つひとつの建物において大きく異なります。
一般的な知識として作業方法を理解しても、実際の工事で完ぺきにこなすのは極めて難しいでしょう。

プロの業者と素人では、どうしても経験に差があります。
今後の生活にも支障が出る恐れがあるので、余程の事情がない限りは無理せず信頼できる業者に依頼してください。

まとめ

外壁塗装は簡単そうに見えるかもしれませんが、専門的な知識が求められるとともに危険が伴う作業です。
自分では問題なく作業しているつもりでも、不備があって結果的に建物の寿命を縮めてしまうこともあります。

外壁塗装を検討しているのであれば、まずは信頼の置ける施工業者を探してみましょう。
施工業者の候補を選ぶ際には、複数のところから見積もりをもらうことをおすすめします。